<フィリーズ6-5メッツ>◇2日(日本時間3日)◇シチズンズバンクパーク

 【フィラデルフィア(米ペンシルベニア州)=佐藤直子通信員】メッツ高橋建投手(40=前広島)が鮮烈の全米デビューを飾った。フィリーズ戦で3回1死満塁のピンチでメジャー初登板。ビクトリノをわずか1球で投ゴロ併殺に抑えた。主砲ハワードを空振り三振に仕留めるなど、2回2/3を1安打無失点の好投を演じた。40歳でのデビューは日本人選手最年長で、1901年以降の近代メジャーでは史上4番目。「満点」デビューのオールドルーキーは次回先発の可能性も出てきた。

 デビュー戦はピンチで巡ってきた。2点差の3回1死満塁。6四球と先発投手の乱調で突然、高橋建に待ちに待った出番がやってきた。打席には2打席連続安打のビクトリノ。「内野ゴロで併殺がとりたかった。自信のある球の1つ」と迷いなく外角へ逃げる129キロシュートを投げ込んだ。

 鋭い打球はピッチャー返し。自らのグラブをかすめ腹部を直撃したが、投-捕-二の併殺。一塁走者が投手モイヤーで二塁封殺のラッキーもあって、わずか1球で大ピンチをしのいだ。

 高橋建

 あの1球で緊張が解けた。あれで落ち着いた。若かったら(捕球で)対応できた。上原より、腹が出ているからよかったかも(笑い)

 先日、みぞおちに打球が直撃したオリオールズ上原のジョークを交え、周囲の爆笑を誘った。夢に見たマウンドではベテランの真骨頂を発揮した。速球の最速は143キロだったが、要所で得意のシュートを効果的に使った。昨季ナ・リーグ本塁打、打点の2冠のハワードからは高め速球で空振り三振。「三振を取ったボールがほしかった」と達成感に浸った。

 2回2/3を投げ1安打1四球1三振の無失点。6回に味方が逆転し勝利投手の権利を得たが、その裏に同点に追いつかれ初白星はお預け。チームも結局5-6で敗れたが、日本人では初の40歳デビューに、「0点に抑えられたので、100点満点をあげてもいいと思う。40になってもこうやってできる姿が、みなさんにいいように映っていたらうれしい」と笑った。

 これまで先発が崩れた際のロングリリーフ要員だった。だがこの日の内容が状況を変えた。メッツ・マニエル監督は「興味深い投手だ。名前は何と発音するんだ。タカヒシか」と呼び名も慣れていないほどだったが、「攻めながらストライクを取れる。ほかの役割の起用も考えたい」と発言。先発陣が不振だけに、先発チャンスが与えられる可能性も出てきた。

 高橋建も「チャンスがあれば」と前向きだが、まずはメジャー定着が先決。「必要だと思われるようになりたい。とりあえず1つ1つです」と気持ちを引き締めた。同じ左腕のレッドソックス岡島の活躍に刺激を受け、現役最後はメジャーでの思いを募らせた。

 広島からFA宣言し、安定した生活を捨て単身赴任。高校生の娘がいるため家族は広島で暮らす。40歳にしてパソコンを覚え、慣れない手つきでメールを打って連絡を取り合う。「メジャー昇格も喜んでくれた。初登板も喜んでくれると思います」。ブルージェイズを解雇されながらも夢をあきらめきれず、再びマイナー契約から“おじさんパワー”であこがれの舞台を踏んだ。不惑ルーキーの挑戦は、まだまだ続く。