史上最高入札額が「恋人」への誠意の表れだった。大リーグ機構は19日(日本時間20日)、レンジャーズがポスティングシステム(入札制度)で日本ハム・ダルビッシュ有投手(25)と30日間の独占交渉権を獲得したと発表した。落札額は約5170万ドル(約38億7800万円)。

 ヤンキース、レッドソックスなど資金力豊富な球団をよそに近年、日本市場開拓にもっとも力を注いできたのがレンジャーズだった。かつてマリナーズ極東スカウト部長としてイチロー獲得に動いたジム・コルボーン氏(元オリックス投手コーチ)が09年、アジア担当に就任して以来、ダルビッシュ有投手(25)の本格調査を開始。常に複数のスタッフを日本へ送り込んできた。ダニエルズGMをはじめ計10人以上のスタッフがダルビッシュを視察していた。

 レ軍のチームカラーとして攻撃陣は破壊力抜群なだけに、特に重点を置いたのが投手部門。「野手は中南米。投手は日本」と、明確な海外戦略を持ち、ある首脳は数年前から「これからは日本人投手を取る」と明言するほどだった。実際、ダルビッシュの徹底マークと並行して調査を続けた結果、昨オフには当時同僚だった建山(日本ハム)を獲得。09年オフには、当時花巻東高の菊池雄星(現西武)に直接あいさつに訪れるなど、日本人投手への関心度は格別だった。

 しかも、ダルビッシュに対する評価は数字でも細分化し、総合力として「ハラデー(フィリーズ)、ヘルナンデス(マリナーズ)クラス」(レ軍幹部)と、サイ・ヤング賞投手と同等の「特A」にランク。基本的に入札制度を疑問視する姿勢を持ちながらも、今回のダルビッシュに関しては1歩も譲るつもりはなく、高騰化が予想される争奪戦でも最善の手を尽くした。

 最終的な落札金額は、その一部。過去数年間、ダルビッシュにもっとも熱意を持ち続けたチームはレ軍だったことが証明された。【MLB担当・四竈衛】