ギリギリの駆け込み契約だった。ブルワーズと2年契約で合意したヤクルト青木宣親外野手(30)が20日、東京・新橋の球団事務所で会見し不安だった胸中を明かした。契約成立は締め切り時間のわずか1分前。その時、青木はラーメンをすすっていた。背番号は7で、米メディアによると2年225万ドル(約1億6900万円)プラス出来高。

 ラーメンをすする箸も、思わず止まった。米中部時間17日午後4時(日本時間18日午前7時)まであと5分。ロサンゼルスに滞在していた青木の時計は午後2時前を指していた。交渉の締め切りが見えてきた時に突然、電話が鳴った。代理人から、条件面の最終確認。OKを出し、合意したという返信を受けたのは締め切り1分前だった。

 当初は2時間前に合意したと伝えられていたが、実際はギリギリだった。「こんなものなのかなと思いました。日本だったらサインしてはんこを押してって契約っぽいことをするんですけどね…」。駆け込み契約だったが、目の前にあるのはどんぶり。なかなか実感がわかなかった。

 テストを受けてから、長く不安な毎日だった。西武中島裕之内野手(29)とヤンキースの交渉が破談になったこともあり「いろいろ考えました」と焦りもあった。「1球団としか交渉できないのは難しい。ダルのような例は別だけど、球団主導の話になる」とシステム自体の問題点も指摘した。「僕の場合は行きたかったわけですから」と、条件にこだわりの少なかった自分でさえ契約が難航したことを付け加えた。

 ギリギリで結ばれた契約には出来高が厚くつけられた。結果を残せば、ヤクルトと同じくらいの条件になるのか?

 という質問に「そう考えてもらって構わない」と答えたことから、1年目100万ドル(約7500万円)、2年目125万ドル(約9375万円)の年俸の他に各年200万ドル(約1億5000万円)規模の出来高がつけられたと推測される。「向こうで実績をつくるしかない。日本ではつくれたけど、全く別物だと考えている。この評価は僕の中では納得している」と、年俸は下がり、レギュラーも確約されていない評価も気にしなかった。

 携帯にはイチローから「楽しみにしてる。おめでとう」とメールがあった。尊敬する先輩の激励を時差ぼけの目をこすりながら見た。ふつふつと湧いてきたやる気。「チームに必要とされる仕事ができるよう、しっかり準備したい」と気持ちを高めた。今日21日にも自主トレのため沖縄へ向かう。【竹内智信】