新ポスティングシステムを使ってメジャー移籍を目指していた楽天田中将大投手(25)がヤンキースと契約合意に達したことが22日、分かった。今日23日に発表される。総額は7年1億5500万ドル(約162億7500万円)とみられる。さらに2000万ドル(約21億円)の譲渡金がヤンキースから楽天に支払われる。ヤンキースには黒田博樹投手、イチロー外野手が在籍。昨季24連勝を記録した右腕が、ワールドシリーズ制覇27回を数える名門球団を選んだ。

 マー君の去就がついに決まった。水面下で続いてきた交渉が、この日までにヤンキースと合意に達したことが分かった。今日23日に発表される。田中は現在、コボスタ宮城で自主トレを続けている。まずはプロ入りから7年間、慣れ親しんだ仙台で、メジャー移籍決定の喜びを語ることになる。

 当初から、ヤ軍は本命視されていた。田中の代理人クロース氏は、ヤ軍の主将ジーターの代理人も務めており、太いパイプを有している。何より、メジャーを代表する名門球団で、資金は豊富。最低でも年俸総額6年100億円以上といわれた田中争奪戦だが、客観的にもヤ軍が勝ち抜く条件はそろっていた。本気度も高かった。田中を長年、調査してきており、特に、昨季はGM補佐を含む編成トップを日本に派遣。近年の低迷打破のためにも並々ならぬ意欲を見せていた。

 ダイヤモンドバックス、カブスなども熱心なオファーを出す中、最大の対抗馬はドジャースだった。ヤ軍に負けない資金力を誇り、住環境の良いロサンゼルスが本拠地。ただ、カーショーを始めとする強固な先発陣を擁しており、田中の必要度という点ではヤ軍ほどではなかった。新ポスティングシステムとなり、田中は移籍先を選べるFA(フリーエージェント)に近い立場だった。ヤ軍、ド軍ともに金銭面の条件に大差はなかったとみられる。一番必要とされているヤ軍で投げるという点に、田中の心が傾いた可能性は高い。

 ポスティングシステムの変更もあり、球団の移籍容認まで紆余(うよ)曲折を経た。だが、最終的には交渉期限である25日午前7時(米東部時間24日午後5時)まで3日を残しての合意となった。日米で報道が過熱する中、田中は多くを語らず黙々とトレーニングを続けてきた。日本一で昨季を終えた時の気持ちを「新たなステージで自分の力を出したい、挑戦したいと思いました」と言っていた。次の舞台へ、扉が開いた。

 ◆新ポスティング制度の今後の契約締結までの流れ

 今オフに新たに成立した「日米間選手契約に関する協定」の第9項に記されている。田中と契約合意した球団は、交渉期限(日本時間25日午前7時=米東部時間24日午後5時)までにMLB事務局とMLB選手会に契約条項を提示して問題がないか「お墨付き」をもらう必要がある。MLBはインセンティブ(出来高)契約についての規定があり、主にこの部分がチェックされる。MLBと選手会の双方からOKが出れば、その時点で統一契約書にサインしていなくても契約成立とみなされる。よっぽどの問題がない限り契約内容の確認に時間はかからないため、交渉期限ギリギリまで悩むことも可能だ。