【サンディエゴ(米カリフォルニア州)8日(日本時間9日)=四竈衛、佐藤直子通信員】ヤンキースからFA(フリーエージェント)となったイチロー外野手(41)の移籍交渉が、本格化してきた。大リーグ関係者が一堂に集まるウインターミーティングが始まり、イチローの新代理人となったジョン・ボグズ氏は「すべてがポジティブ」と、今後の交渉に自信を見せた。現時点で具体的なオファーはないというが、レッズやパドレス、オリオールズなどが真剣に調査中だ。

 水面下で動き始めたFA市場の感触を、ベテラン代理人のボグズ氏は、しっかりと感じ取っていた。「市場が活発になるのを待っている状態だが、10秒でダイナミックに変わることもある。優勝を狙うチームでも再建を目指すチームにとっても、イチローから学ぶべきことはたくさんあるはずだと思う」と自信を見せた。

 41歳のイチローは今季、ヤ軍の中で「スーパーサブ」的な役割とあって、出場機会は大リーグ14年目で最少の143試合にとどまった。それでも最終的に打率2割8分4厘、1本塁打、22打点をマーク。攻守に年齢を感じさせないプレーを披露した。メジャー通算3000安打まで156本と射程圏内。イチロー自身、米ケーブルテレビのインタビューで来季も大リーグでプレーする強い意思を語っている。ボグズ氏は「彼の希望は、定位置を競争できる機会があるかどうか。近い将来、殿堂入りする選手だし、プレー機会があれば、自然に到達するだろう」と期待感を隠さなかった。

 これまで複数球団がイチローに興味を示す中、ここへきてレッズが有力候補として浮上してきた。今オフ、外野手補強を課題に挙げているだけでなく、プライス監督は、イチローがデビューした01年当時、マリナーズの投手コーチを務めた間柄。この日は特定の選手名は避けたものの、「出塁率がいい1番打者の外野手」の獲得を得点力アップのポイントに挙げるなど、イチローは適役。さらに、今オフからレ軍特別アシスタントに就任したケビン・タワーズ氏が、ダイヤモンドバックスGM時代からイチローに敬意を示しており、積極的にアプローチする見込みだ。

 そのダイヤモンドバックスは、この日までにキューバ出身のトマスを補強したため撤退模様だが、レ軍のほか、パドレス、オリオールズなどが真剣に調査中。今後、具体的なオファーが出れば、イチローの移籍交渉は一気に加速しそうな気配だ。

 ◆シンシナティ・レッズ

 本拠地はオハイオ州シンシナティで、ナショナル・リーグ中地区所属。1881年に設立され90年にナ・リーグ入り。1919年に初めて世界一に輝き、これまで5度の世界一を達成。70~76年は「ビッグ・レッド・マシン」と呼ばれる強力打線がチームを引っ張り、この間に地区優勝5度、リーグ優勝4度、世界一2度を達成している。強力打線の一員だったピート・ローズ氏は安打製造機として何かとイチローと比較される存在で、メジャー最多の通算4256安打にイチローは日米通算であと134本に迫っている。