やられたらやり返す。広島黒田博樹投手(40)が、オリックスとのオープン戦に先発し、最長6回を77球でまとめ5安打2失点。4回、ブランコに2ランを浴びると、志願して続投した6回は空振り三振できっちりリベンジした。ヤンキース時代は援護に恵まれないことも多かったが、この日は3回までに大量9点をもらい、移籍後初勝利。日本球界では07年9月27日ヤクルト戦以来8年ぶり、2726日ぶり勝利を挙げた。

 6回のマウンドは、志願して上がった。「それほど球数がいっていない。もう1イニング、クリーンアップに行かせてください」。5回まで球数は67球。4回には、3番糸井に左前打、4番ブランコには浮いたツーシームを本塁打されていた。6回、3度目の対戦で糸井を二ゴロに打ち取ると、ブランコには本塁打されたツーシームから入り、最後はスプリットで空振り三振を奪った。きっちりと借りを返し、今季最長6回77球で復帰後初勝利。広島のオープン戦2勝はいずれも黒田の登板試合だ。

 この日は「もう1つか2ついい球があれば楽な投球ができた」と振り返る出来だった。2回2死から帰国後初安打を許すと、5回まで毎回走者を背負った。07年までの広島、米国での7年間、援護に恵まれなかった右腕は、直前の打者一巡の援護でリズムを乱したのか復帰後初被弾で初失点。「外国人の初球の入り方をあらためて教訓となった。シーズンが始まれば何が起こるか分からない。いろいろ経験できたことは良かった」。

 調子が悪い中でも手元で動く球種を両サイドに投げ分け試合を作った。8日のヤクルト戦では、黒田の代名詞といえる「フロントドア」と「バックドア」(両サイドのボールからストライクとなる球)で手玉に取ったが、この日はオリックス打線の内角をえぐった。1回2死から糸井に内角へのカットボールで一塁ゴロ。3回1死から伊藤には内角からさらに厳しく内に入るツーシーム。自打球は左すねを直撃した。「ゲッツーを取ろうと右打者の懐を攻めた。右打者のもああいう球があれば意識する」。

 米大リーグ仕込みの黒田の投球術に、後輩たちは「打たれないんですか」と疑問の声を上げたことがあった。黒田も実際に「何度も打たれたことがある」という。それでも恐れずに投げ続けたことで習得した。この日の黒田の投球は、広島の若手投手の疑問に対する答えとなった。

 最終調整の22日ソフトバンク戦で100球程度を投じてシーズン開幕を迎える。「100球のうち100球を思い通りに投げられることはない。それが50球でも30球でも抑える。それをメジャーで培ってきた」。登板2試合だけでは、黒田の投球の深さは測れない。【前原淳】