日本ハム2年目の岡大海外野手(23)がプロ1号本塁打を放った。2回2死一、二塁で左越え3ラン。右膝に不安を抱える不動の1番打者の西川に代わり、今季初スタメンの1番抜てきに応えた。プロ1年目の昨季は、開幕1軍も左足リスフラン関節の脱臼骨折と靱帯(じんたい)断裂の大ケガで棒に振った。倉敷商-明大の直系の大先輩、楽天の星野仙一シニアアドバイザー(68)の前ではかなわなかったアーチを、たくましく懸けた。

 思いが爆発した。2回。大本命の大谷から「ヒーロー」を奪った。岡だ。2死一、二塁。カウント1-2からの6球目を、反射的に振り抜いた。「追い込まれてから、本当に食らいつくしかなかった」。左翼席で両手を挙げて待つ日本ハムファンに、プロ初アーチを届けた。プロ2年目。何度も予感漂わせた節目の日を、この日作り上げた。「本塁打になって良かった」。ヒーローインタビューのマイクに笑いかけるように、八重歯をのぞかせた。

 期待の分だけ、力は増した。不動の1番打者の西川が右膝の不調で欠場。途中出場が続いていた岡に、思わぬ形で今季初スタメンが巡ってきた。「自分らしく、自分らしさをどうやって出していこうか考えていた」。出した答えは、持ち味のフルスイングだった。栗山監督は「岡らしさ、スケールの大きさが出ていた。これで落ち着くと思う」と今後も期待した。

 恩返しの1発だった。高校、大学と直系の大先輩が星野シニアアドバイザー。岡が高校3年のとき、星野氏の元に明大から連絡が入った。「岡を取りたいと。だけど、他のところに行くという。今の時代だから、本人がそれでも他に行くというのならいい」。高校の監督、OB会にも熱く訴えていた。「『義』を重んじなければダメだと。もし他に行ったら、倉敷商と明大の関係は切れるぞ。俺が切らすぞ」とまで言ったという。岡の進むべき道に、熱心に指針を与えていた。

 昨季は、星野氏が指揮を執っていた楽天との3連戦で先発も10打席無安打。その後、大ケガでシーズンを棒に振った。「昨年は何も出来ていないので、今年こそ、という思いでやってきている」。「恩師」の前では果たせなかった成長の跡を、たくましく刻んだ。【田中彩友美】

<主な日本ハム打者プロ初本塁打>

 ◆中田 プロ3年目の10年7月20日ロッテ戦(札幌ドーム)で、大嶺祐の141キロ直球を左翼席へ。通算91打席目の1発だった。

 ◆大谷 ルーキーイヤーの13年7月10日楽天戦(Kスタ宮城)、通算92打席目に永井から右翼スタンドへプロ1号を放った。

 ◆田中 2年目の01年3月24日開幕・近鉄戦(東京ドーム)で、代打で初アーチ。当時リーグ9人目の開幕戦代打本塁打だった。

 ◆陽岱鋼 入団3年目の08年4月29日ロッテ戦(千葉マリン)で、成瀬から放った。