スコアは0-5。阪神マウロ・ゴメス内野手(30)は6回1死一塁で打席に立った。セオリーは走者をためることかもしれない。それでも、この男は違った。左翼の左を襲う強烈なライナーに、走る速度を緩めない。体重100キロを超える巨体を揺らし、二塁へ猛然とスライディング。結果的にこの試合最後となった「H」ランプが、希望になった。

 ゴメス 打席の感覚は悪くないよ。

 下手投げ右腕山中に、4番は対応した。先頭で打席に立った2回。浮き上がるように感じる相手の生命線、高めの121キロ直球を振り抜いた。左中間フェンス直撃の二塁打。結果的には無得点だったが、和田監督も「取るとすればあそこだったけれど、いつもいつも取れるわけじゃない」と振り返る好機を作り上げた。

 チーム唯一のマルチ安打。1人勢いが違うゴメスは、リーグ再開後33打数13安打4本10打点の暴れぶり。全9試合で安打を記録。今日3日は阪神にとって、絶対に負けられない一戦だけに、主砲の好調キープは救い。横浜に移動してのDeNA戦は、プロ野球史上初の1万試合となるメモリアルゲームだ。5月28日に達成した球団5000勝を始め、多くの記録は宿敵巨人に先を越された。それでも通算試合では阪神が先駆者になる。命運を握るゴメスは今季、横浜で打率3割8分9厘と打ちまくる。

 ゴメス いつも言っているけれど、1戦1戦戦っていくだけだよ。

 劣勢にも貪欲で、絶好調で、横浜にも好相性。今日阪神は勝てば、ヤクルトが勝っても再び首位に浮上する。3連敗からの巻き返しは、この男のバットにかかっている。【松本航】

 ▼阪神は今日3日のDeNA戦で球団創立1万試合を迎える。第1戦は1936年(昭11)4月29日金鯱戦(甲子園)で3-0の白星発進。34年創設の巨人はその時期に米国遠征中で、阪神の到達はプロ野球史上初となる。