日本ハムが驚異の粘りを発揮した。1点ビハインドの9回1死一、二塁、代打の石川慎吾外野手(22)が、起死回生の中越え適時二塁打を放ち同点。続くレアードの左越え2点二塁打で勝ち越した。栗山英樹監督(54)の采配が的中し、逆転に成功。4年ぶりの西武戦6連勝を飾った。敗れれば首位ソフトバンクと今季最大7ゲーム差まで広がるところを土壇場で踏みとどまった。

 湿度をたっぷりと含んだ空気が体に絡みつく。ユニホームはネットリと胸に張り付く。だけど…気分は爽快だ。1点差の9回、3連打で3点を奪う逆転勝利。栗山監督は「1回も前に出ていなかった(リードしていなかった)けど、みんなが(心を)ひとつにしてくれた。こういうゲームは大きい。よく勝ちきってくれた」。狭山の森から聞こえるセミの声をBGMに、さわやかにバスに乗り込んだ。

 ポイントは「6」だった。打線を組み替え、杉谷を5月30日中日戦以来となる「6番」で起用した。中軸の後ろを担う、大事なポジション。1回は2死満塁、3回は2死一、二塁、さらに6回は1死二塁、すべて得点圏で打席が回ったが結果につながらなかった。1点差に迫った7回も、2死満塁で杉谷の打順。指揮官は佐藤賢を代打に送ったが、空振り三振に倒れた。

 だが土壇場に、ドラマがあった。陽岱鋼の四球を足掛かりに、1死一、二塁の好機をつくった9回。まわってきたのはやはり「6番」だった。左腕の守護神・高橋朋に対し、栗山監督は石川慎を指名した。「いま慎吾は状態がいい」。1ボールからの2球目、外角の145キロ直球。高々と舞い上がった打球は、前進守備の中堅秋山の頭上を越え、ワンバウンドでバックスクリーンに飛び込んだ。「無心でした。いいところをもらっただけ。気持ちで負けないように。一番強い球を待ってました」としてやったり。レアードの決勝打で劇的勝利が完結した。

 首位ソフトバンクとのゲーム差も「6」で踏みとどまった。指揮官は「みんなが、何とかしようとなった。チームの推進力になる」。栗山政権下では初めての西武戦「6」連勝。足場を固め、上位を追撃する。【本間翼】