芸術的な決勝打で、ロッテがAクラスに浮上した。3-3の7回2死二塁で角中勝也外野手(28)が左前に勝ち越し打を放ち、日本ハム吉川をKO。外角低めの見逃せばボールとなるスライダーを流し打った。7月24日の楽天戦から2番に入り、打線が機能。そこからチームは7連勝で勝率5割復帰と絶好調だ。ついに西武を抜き、4月16日以来の3位に返り咲いた。

 エースの言葉に、角中は奮い立った。3-3の7回2死二塁。打席に向かう前、ベンチ裏で着替えていた時だ。涌井から「期待しているよ」と言われた。「ワクさんも何とか抑えていた。野手が何とかしてあげたかった」。日本ハム吉川に4球で追い込まれたが、ヤマは張らなかった。「シンプルに何も考えず」に、見逃せばボールのスライダーを流し打った。持ち味のバットコントロールで捉えた。「バットが出やすいところに来てくれた」と、三遊間を破り決勝点を奪った。

 ヤマは張らなかったが、伏線はあった。3回の第2打席だ。カウント2-2から7球連続ファウル。大半が外角いっぱいの直球か、外に逃げるスライダーだった。13球目で見逃し三振に倒れたが、「結果的にそうなった」と、過程でしのぎ続けたことで吉川の投球のタイミングを体感。決勝の一振りにつなげた。

 連勝の裏には、打線が固定されたことが大きい。82試合で計77通りもの打順が組まれたが、この7連勝中は3通りのみ。角中は2番を担う。開幕から主に3番を打ってきたが、つなぎの打順となってからの7試合で4打点7得点。「打順は関係ない。やることをやるだけ」とクールだが、走者がいれば進め、かえす。9回のように先頭で出塁もする。状況に応じた働きに、伊東監督は「カクはいろいろできる」と評価した。角中は「全員で勝った勝利。投打がかみ合っている。続けていけば、おのずと上に行ける」と、3位浮上を熱っぽく喜んだ。【古川真弥】