奇跡のCSでも、和田阪神は初戦で追い込まれた。延長10回、安藤と高宮の投球はきわどく外れ、ポストシーズン史上初というサヨナラ押し出し四球でシーズン2位巨人に敗れた。和田豊監督(53)の退任が決まり、OBの金本知憲氏(47=野球評論家)と監督就任交渉が進む特殊状況下で、今日の第2戦から連勝しない限り、阪神の15年シーズンは幕を閉じる。

 残酷な結末だ。高宮がフルカウントから投じたラストボールは、高橋由の胸元に外れた。延長10回1死満塁で痛恨のサヨナラ押し出し。それも安藤と高宮で与四球4つ、被安打0の自滅だった。高橋由のヒーローインタビューが漏れ聞こえる三塁側ベンチ裏。「目いっぱいいって、全力を尽くした結果なので…」。和田監督は厳しい表情で現実を受け止めた。

 右内転筋痛で離脱した呉昇桓の穴はあまりにも大きかった。先発藤浪からプロ初救援の岩崎。プロフェッショナルの安藤、高宮と懸命につないだが、競り合うほど戦力差は歴然。10回1死二塁の場面では監督自ら高宮のもとに出向き「長野を歩かせて亀井と次で勝負しよう」とカツを入れたが、3連続四球。むなしく重い黒星だけが残った。

 何としても取りたい初戦に、強い意思は超攻撃型オーダーに表れていた。1番上本、2番今成、3番鳥谷…。CSの大一番で今までにない打線を組んだ。「マイコラスにずっとやられていた。それと同じでは同じやられ方をするから」。

 今季0勝3敗、防御率1・50と抑え込まれた助っ人右腕。特に鳥谷は13の0と散々だが上本も今成も低打率だ。だがどうせ全員相性が悪いならと、常識破りの組み替えでも現状を打破したかった。主将を1番から外すのは2カ月ぶりで、マートンを中軸から外すのも4カ月ぶり。先発藤浪の女房役は鶴岡に固定していたが、打撃優先で梅野を起用した。開幕から6試合組んで1勝しかできず、解散していた若きバッテリーの復活は5カ月ぶりだった。

 「梅野がいいと思って梅野でいった。僅差でしっかりリードしたし、この経験が今後につながると思う」

 その特別打線が2点を追う7回、福留、マートンの連打から好機をつくり、梅野の適時打と代打西岡の犠飛で追いついた。指揮官が「よく追いついたけど、勝ち越したかった」と言う通り、同点のまま救援陣の力比べになれば分が悪い。最後は呉昇桓不在に泣く形となった。

 文字どおりの、崖っぷちに立たされた。明日は総力戦かと問われた指揮官は「もちろんそのつもりでいきます」と目を見開いた。タテジマ一筋31年、今季限りで退任する和田監督のラストユニホーム、チーム和田阪神の終戦になってしまうのか。猛虎の意地を見たい。【松井清員】

 ▼阪神の高宮が延長10回裏、1死満塁から高橋由に四球を与えサヨナラ負け。昨年までのポストシーズン試合で、サヨナラ試合は日本シリーズ35試合、プレーオフ・CSで8試合あったが、押し出し四球で決着したのはプロ野球史上初となった。なお阪神の公式戦で与えた直近のサヨナラ押し出し四球は、13年9月28日中日戦9回、久保田が松井雅を歩かせ敗戦。巨人戦では、04年6月19日の11回に安藤が後藤に与え0-1で敗れた例がある。

 ▼阪神がCSファーストステージ第1戦で敗戦。昨年まで3試合制のCS(パ・リーグの04~06年はプレーオフ)で、第1戦●の19チーム中、第1Sを勝ち抜いたのは06年ソフトバンクと09年中日の2チームで、突破の確率はわずか11%。阪神は過去のCSファーストステージ(07、08年は第1ステージ)第1戦●だった07、08、10、13年は、いずれも敗退している。