阪神は2年契約を終え、来季慰留交渉中の呉昇桓投手(33)の流出に備え、新外国人ストッパーの緊急リストアップに入った。前日に母国・韓国のメディアが海外での不法賭博容疑で検察に召喚すると報道したことについて8日、緊急会議を開いた。今月中旬から年末にかけて設定されているリミットまでに潔白を証明する材料がなければ、交渉を打ち切り、新外国人ストッパーの獲得に乗り出すことが決定的となった。

 球団事務所が緊迫したムードに包まれていた。前日呉昇桓の母国韓国メディアが海外での不法賭博容疑で検察に召喚されると報道。これを受けて球団幹部が集まり、午前中から緊急会議を行ったのだ。会議後、報道陣に対応した四藤球団社長(55)は呉昇桓との交渉についてこう話した。

 「進展がない。代理人から連絡があって『こういう状況になっていることについて非常に申し訳ないと思っています』と。我々はしばらく状況や推移を注視していくことになると思う。今、出ている取り調べがいつになるか。進展状況を確認した上でになると思う」

 代理人からは今回の報道についての説明はなく、困惑してもいたという。球団側も今後は捜査の進展を見ながら判断する方針を示した。一方で期限を設定し、交渉打ち切りも視野に入れていることを明かした。

 「いつまでも待つわけにいかない。基本的に問題がなければ交渉を進めたいと思う。それはそれとして、あるタイミングで備えとして、別の手だても考えていかないといけない」

 四藤球団社長は「別の手だて」と表現したが、交渉の打ち切りと新外国人ストッパーの緊急補強に乗り出す可能性について球団が言及したのは初めて。球界が野球賭博問題に揺れる中、阪神が今回の不法賭博容疑をそれだけ深刻に受け止めているという証拠だ。

 また暴力団関係者から巨額の資金を借りた疑いも浮上しており、同球団社長は「それが事実であれば(野球協約に)抵触するでしょう。日本であれ、韓国であれ、アメリカであれ、そういう理解はしています」と話した。

 ここまで球団は今週末を期限に交渉を行ってきたが検察に召喚されれば結果が出るのは3月、4月という見方もある。そこで今月中旬から年内を期限とし、それまでに潔白の見通しがなければ、交渉を打ち切って新守護神の緊急補強に切り替えることが濃厚だ。

 関係者によれば、ここまで新ストッパー候補は米大リーグの選手を中心にリストアップしており、広島を自由契約になったヒース、同じくオリックスでプレーしたマエストリらの名前も挙がっていたという。関係者の中には「白、黒ではなくグレーという結論になるのでは。そうなれば、うちの球団としては(契約は)難しいだろう」という声もある。来季残留を熱望してきた阪神側のトーンも変わってきた。潔白を主張する呉昇桓を取り巻く状況は厳しいものになってきた。

 ◆デュアンテ・ヒース 1985年8月28日、米国生まれ。ブレーブス3A-ホワイトソックスを経て14年途中に広島入団、今季は本職のリリーフで43試合に登板。2年間で通算50試合、6勝6敗4セーブ、13HP。防御率2.36。193センチ、109キロ。右投げ右打ち。

 ◆アレッサンドロ・マエストリ 1985年6月1日、イタリア生まれ。カブス2Aなどから四国IL香川を経て12年にオリックス入団。4年間で通算96試合、14勝11敗1セーブ、8HP。防御率3.44。183センチ、80キロ。右投げ右打ち。