中日のドラフト1位、小笠原慎之介投手(18=東海大相模)が衝撃のプロ初ブルペンだ。6日、沖縄・北谷キャンプで30球を投げ、球団のスピードガンで最速143キロを計測。甲子園を制した昨夏の状態から「半分くらい」の力の加減でも剛速球を投げ込み、周囲を驚かせた。痛めていた左肘の不安を感じさせない“デビュー”で、目標の開幕1軍へスタートを切った。

 左腕を振る。土に踏み込む。ボールが風を切る。小笠原が放つすべての「音」にスケールの大きさが表れた。約2カ月ぶりのブルペン。水を得た魚となり、ぐんぐんとエンジン回転数を上げていった。

 「初めてだったので、球が少しフケる(上ずる)ことが多かったけど、よかったと思います。やっと、というところです。投げられて安心してるけど、ここからがスタート。思った以上に腕が振れて、いい球がいきました」

 最速は143キロ。終了後、後ろで見守っていた森ヘッドコーチから「甲子園のときと比べてどれくらいだ」と聞かれ、小笠原は「半分くらいです」とニッコリ。ヘッドは「それであと半分あるのか…」と驚いた。力の入れ具合は6割程度だったという。

 甲子園後、左肘痛を発症。秋は定期的にブルペンに入ったが、状態が上がらず、冬は投げたい気持ちを抑えて、ノースローで回復に努めた。キャンプは1軍に呼ばれたが、外国人以外は2月1日のブルペン入りが必須。岩瀬や大野が投げ込む中、首脳陣に「焦りたくない」と伝えた。谷繁監督、森ヘッドも本人の思いを尊重。異例の扱いで1軍に置いた。たまったものを爆発させるように、初ブルペンで能力を示してみせた。

 視察したヤクルト伊東昭光編成担当(52)は「高卒1年目から活躍した松坂、マー君、大谷らと比べても遜色ない素材」と評した。谷繁監督は「やっぱり、いい。高校の卒業式もしていない選手が、軽く投げて140キロ。そういないでしょ。クセがないバランスがとれたフォーム」。開幕ローテ入りの可能性についても「もちろん入ってくる」と候補として認めた。

 「体がキツい状態であれだけ投げられたのは収穫。こんなものじゃないと思っています。目標は開幕1軍です」と最速151キロ左腕は大物感を漂わせた。感嘆の声は決して大げさではない。そう思わせるブルペンデビューだった。【柏原誠】

<主な高卒ルーキーのキャンプ初ブルペン>

 ◆西武松坂(99年=高知)3日目、小雪がちらつく中で99球。「70%の力」と言いながら140キロを超える快速球を連発。「思ったよりいい球が投げられました」。東尾監督は「100%ならどれだけいくんだ」。

 ◆楽天田中(07年=久米島)初日に立たせて10球、座らせて53球。直球のみを投げ込んだ。「自分の中では、楽しく投げられました」。野村監督は「片りんは見たな」とにんまり。

 ◆阪神藤浪(13年=宜野座)初日に首脳陣の配慮でブルペンを独占し、捕手を立たせたまま30球。和田監督らスタッフ、報道陣200人の視線を集めたが「見られている意識はありましたが、気になりませんでした」。

 ◆日本ハム大谷(13年=名護)3日目、捕手を立たせたまま、カーブやスライダーを交え約50球。野手との二刀流に取り組み、疲労もあって制球は乱れた。「全体的に良くなかった」。