阪神藤浪晋太郎投手(21)が「超変革」フォークで周囲をくぎ付けにした。沖縄・宜野座キャンプで8日、3度目のブルペン投球を行い、変化球を含め最多の62球を投じた。中でも、中日キャンプに臨時コーチとして参加している「フォークの神様」杉下茂氏(90)の前で投じたフォークの仕上がりに手応え。金本知憲監督(47)も大黒柱の調整に目を凝らし、満足した。

 投手1人になったブルペンに藤浪の声が響いた。「フォークいきます」とボールを人さし指と中指で挟んだ握りを示した。低めを意識したフォークはベース手前で鋭く落ちた。金本監督が約20分間、ブルペンを離れなかったように、レジェンドたちをくぎ付けにする軌道。藤浪にも手応えがみなぎっていた。

 「(フォークは)いい感じで投げられていた。しっかり(腕を)たたけているからでしょうね」

 スプリットに近く、球速を感じさせながらもカクッと落ちた。受けたドラフト2位ルーキーの坂本誠志郎(22=明大)は「角度もあって速いなという印象。速くて落ちる」と“高速フォーク”を証言。香田投手コーチは「もうちょっと投げ込まないといけないが、強烈な武器になる」と、魔球になることさえ予感した。

 目を見張るフォークボールだけではなく、調整は周到だった。左打者を立たせて「外カットいきます」。外角へのカットボール、いわゆる「バックドア」の軌道を確認した。6日のブルペンで最速1・01秒を計測したクイック投法も再チェック。キャンプ前から重要視している「実戦登板」へとモードが進む。

 通算215勝を挙げた「フォークの神様」杉下氏はネット裏で、1球1球を目で追った。「いろんな球種を投げていたね。みんなたたけていたね」とフォークを含めて及第点を与えた。なにより、今キャンプ最多の62球を投じる姿に、金本監督はひと安心した。

 「工夫してやっているんじゃないかな。チェンジアップ、スライダー、カットボールも投げたり。フォークはあるというだけでも(いい)。去年も結構、三振を取ったんでしょ。可能性のある投手。成長段階だから」

 高卒の新人から3年連続2桁勝利となる14勝をマークした昨季。オフは右肩炎症の回復を待ち、投球練習を控えてきた。2月に入り、各球種が順調なステップを踏んで仕上がる。課題としている守備練習も欠かさない。「本番の実戦でできるように。反復練習だと思うので」。藤浪が取り組む「超変革」は、すべてがチームの勝利につながる。【宮崎えり子】

<藤浪の今キャンプ>

 ◆1日 ブルペンには入らなかったが、筋トレや居残り打撃練習など精力的。守備について下柳臨時コーチと話し込む場面もあった。

 ◆2日 苦手の守備を特訓。高代、平田両コーチに福留と鳥谷からも助言をもらった。名手の徹底指導に「ボールに対して引くのではなく、入ることだとアドバイスしていただきました」と満足。

 ◆3日 キャンプ初ブルペン。開幕投手を争うメッセンジャーとそろい踏みで、捕手を立たせて15球、座らせて47球。全変化球を試し「感覚は良かった」。左打者の内角高めカットボールなど実戦を意識した。

 ◆4日 志願の打撃練習。宜野座ドームで金属バットを握り、マシンに向かった。「引っ張る練習をしたかった。木のバットだと、芯を外すと折れてしまう。金属だと思い切り引っ張れますから」と説明。

 ◆6日 ブルペンで1・01秒の超高速クイックを披露した。プロでも上位のレベルで「自分自身、驚きました」。片山ブルペン捕手は「カール・ルイスを連れてきてもアウト」と証言。