泥にまみれて超変革! 阪神鳥谷敬内野手(34)が12日、特守に志願参加した。新井、上本の2人が予定されていたメニューに飛び入り参加。計47分間で102球を受け続けた。ゴールデングラブ賞死守、そして金本監督から指令された20本塁打に向けて下半身強化は順調そのもの。その仕上がり具合には、鳥谷取材9年目に入る虎番・佐井陽介もビックリだ。

 特守終了からわずか2分後。サブグラウンドから宜野座球場まで歩く道中、泥だらけの鳥谷にくっついた。まだ続けられたのでは、という問いに「いやいや、もう動けない。ケガします」とニヤリ。まだ冗談を飛ばせる余裕に驚いた。

 毎朝、球場事務室の前には1日のメニュー表が置かれている。午後2時20分からの内野特守組には新井、上本の名前しかなかった。久慈内野守備走塁コーチによれば、練習中に鳥谷から「僕も行きます」と志願してきたらしい。疲労が蓄積するキャンプ第3クールの2日目に実績十分のベテランがフラフラになる練習を欲するだけでも異例なのに…。約300人の観衆に披露した47分間の足運びが、さらに衝撃的だった。

 三塁で44球。遊撃で32球。最後は10本無失策でクリアのメニュー2本を3度目の挑戦で達成した。計102球で失策はわずかに1。しかも終盤の80球目に二遊間のゴロに飛び込んでグラブからこぼれたものだった。左右に振られ続けても最後まで球際で追いつく。2歳下の新井、5歳下の上本よりも足が動いていた。2人に疲れが目立ったわけではない。鳥谷が強すぎるのだ。

 新井の足がふらつけば「両足そろってる!」と突っ込み、上本がもん絶の表情で倒れ込めば「うまい! ダマされるわ!」とちゃかす。最後まで笑顔は絶えなかった。そんな姿を見ながら、自分に厳しいキャプテンにしては珍しい一言をふと思い出した。自主トレ公開日の1月25日に「ここ数年で一番いい状態」と明かしていたことを。

 特守は今キャンプ2度目。「自分の場合、下を作るのにいいから」。例年、特守は激しい運動量が必要な遊撃守備、バットを振るための下半身強化という位置づけだ。すでに2キロ前後体重を増やした体で、ここまで動けるという事実は「一番いい状態」という言葉の裏づけになる。今日13日には早出守備練習にも参加予定。特守についても「空いている時間があればやっていきたい」と宣言した。

 昨季は右脇腹負傷、肋骨(ろっこつ)骨折という重傷が相次ぎ、鉄人をもってしても苦しい期間が長かった。悔しさもあったに違いない。ゴールデングラブ賞死守、金本監督から厳命された20本塁打以上、そして悲願のV奪回へ。鳥谷は着々と強靱(きょうじん)な土台作りを進めている。