意地の逆転勝ちだ。後半戦開幕から5連敗を喫していた虎が、打ち合いを制した。1点ビハインドの2回に原口文仁捕手(24)が8号ソロを放ち、反撃のノロシを上げた。原口は6回の好機で決勝の逆転2点打。チーム15安打の猛攻の軸となり、後半戦初勝利の立役者となった。

 鉄人・金本監督が「もっとも頼れる男」と評価する原口が連敗阻止へ暴れまくった。同点8号ソロに逆転2点適時打。4度目猛打賞で勝利に大貢献だ。

 「負けてばっかじゃね、ボクたちも悔しいんで。気持ちを全員で出せたことがよかった」。最大の見せ場は1点を追う6回2死満塁。持ち前の勝負強さを見せつけた。広島ヘーゲンズからファウルで粘った9球目カットボールを打った。体勢を崩しながらバットをたたきつけた打球は高いバウンドで左前へ抜け、貴重な逆転2点適時打だ。

 「しっかりボール球を見送って、しっかり粘ることができた。最後は少し打つポイントを前にしてたたくことができました」

 売りものの長打力も見せた。1点を追う2回だ。広島中村恭が1ボールから投げた2球目の真っすぐを捉え、左翼へライナーでたたき込む。すぐに試合を振り出しに戻す同点8号ソロを放った。

 「あそこは準備ができていたのでファーストストライクから自分のポイントでとらえることができました。ホームランですぐに点を取り返せるとは…」

 首位広島相手では自身初となるアーチをかけると守備でもハッスルプレーだ。6回、新井が打ち上げたファウルフライにミットが届かないのに構わず、ダイブ。ユニホームを真っ黒にした。

 広島黒田の日米通算200勝達成の完全な引き立て役となった前夜の敗戦。指揮官は「本当に悔しいと思っているのか」とナインに怒った。その気持ちは十分、伝わっている。

 同じく完敗の19日巨人戦で7号ソロを放った際には「ファンを喜ばせたかったので」と口にした原口。育成出身のたたき上げだ。プロ野球のなんたるかをチームの誰よりも分かっているかもしれない。「鳥谷外し」の衝撃の陰で苦労人が光った夜だった。【編集委員・高原寿夫】

 ▼阪神は球宴後6試合目にして初勝利。前日23日まで、12球団で後半戦に入り唯一白星がなかった。5月22日からの広島戦の連敗は9でストップ。88年に記録した球団ワーストと並ぶ、10連敗は免れた。またマツダスタジアムでの6月24日からの連敗も5で止めた。

 ▼阪神の逆転勝利は、7月12日ヤクルト戦(長野)で、8回に3点を挙げ3-1で勝って以来。今季13度目だが、セ・リーグでは最少だ。なお、最多は広島で30度。