さっそうと歌え。甲子園での7連敗から大脱出、6月28日DeNA戦以来の本拠地勝利で、六甲おろしがマンモスに鳴り響いた。同点の8回。それまで併殺あり、一塁守備で後逸ありと冷や汗をかいた阪神マウロ・ゴメス内野手(31)が12試合ぶり15号2ランをバックスクリーン左に放り込んだ。さあ今日も歌うぞ、オウオウオウオウ~。

 完璧だった。やっと胸がすかっとした。1歩、また1歩。夜空を見上げながらゴメスはゆっくりと歩を進める。バックスクリーン左に吸い込まれた打球を確認すると、表情を崩すことなく歩を早めた。8回1死一塁。ヤクルト・ルーキの高め148キロ直球を捉えた。決勝の15号2ラン。甲子園球場が忘れかけていた熱狂の渦を呼び戻した。

 「しっかり自分としてはたたいたと思いますし、同点の場面でチームに貢献するバッティングができて良かったです。なかなか結果が出ない状況が続いていたんで。良かったですね」

 この日も「いつものゴメス」になりかけていた。試合前まで、7月の月間打率は1割9分4厘と絶不調。20日巨人戦では今季4度目のスタメン落ちを経験した。打撃の不調は守備にも波及し、軽率なファンブルも目立っていた。2回無死一塁では遊ゴロ併殺。4回に右前へポトリと落ちる反撃の適時打を放ったが、8回2死一塁での守備では、西浦のゴロを捕球ミス(記録は安打)、失点の危機を招いていた。今季、何度も見た光景。マウンドの藤川がバレンティンを三振に斬って、針のむしろは免れた。その裏の打席。7月7日東京ドームでの巨人戦以来、甲子園では5月18日中日戦以来のフェンスオーバーで汚名を返上し、自らを救った。光明となりそうな1発に、金本監督も「中盤いいところでね。ゴメスが打つと点が入りますね。彼もどんどんテンションを上げてやってほしいね」と復調を期待した。

 打撃不振中、苦悩するゴメスをチームメートが支えてくれた。22日広島戦では試合前のティー打撃中に、気遣った福留が精神面について助言を送ってくれた。「そういう助けというのが自分にとって本当にありがたいです」。周囲の温かさをゴメスは感じ、会心の1発でこたえた。

 「ファンの皆さんも喜んでいただけたと思います。明日も同じようにファンの皆さんを楽しませればいいなと思います」

 広島と巨人に3タテを喫するなど、甲子園で7連敗していた。泥沼を脱した聖地には6月28日DeNA戦以来、約1カ月ぶりとなる六甲おろしの大合唱が響いた。ベンチ裏、歌声を耳にしながら指揮官は苦笑い。「本当、すいません」。夏の長期ロード前、最後の甲子園6連戦。1回といわず何度も、ファンを歌わせる。【梶本長之】

 ▼阪神は甲子園での連敗を7で止めた。6月30日DeNA戦に敗れた後、7月は広島3連戦、巨人3連戦に全敗。球団ワーストは98年の12連敗。今季甲子園での連勝は4月中の3が最大。

 ▼1回の3点ビハインドを4回に追いつき、8回に勝ち越し逆転勝ち。今季14度目の逆転勝利で、24日広島戦に続き逆転勝ちでの連勝は初。逆転負けは19度喫している。