球団史上最強の「左の大砲」になった。DeNA筒香嘉智外野手(24)が、東京ドーム今季初本塁打をマークした。5回1死、巨人今村から左中間席に35号ソロを見舞った。左打者では、1950年の藤井勇を抜き66年ぶりに球団最多記録を更新。2安打2打点の主砲を中心にチームが機能。梶谷が4安打3打点、守護神山崎康も7戦ぶりのセーブを挙げた。東京ドームでの連敗を6で止め、2位巨人とのゲーム差を4・5に詰めた。

 もはや見慣れた光景になってきた。筒香が悠々とダイヤモンドを周回した。4点リードの5回1死。梶谷の右翼ポール直撃の3ランで流れはできた。押せ押せムードの中、静かに打席に入る。カウント1-1からの3球目、高めに浮いた直球にバットを合わせた。打球は左中間席に。敵地で球界最高峰の1発を見せつけた。左打者限定ながら球団記録を更新する35号に「前の打者が必死につないでくれた。その流れで僕も打たせてもらった」と感謝した。

 かすかな異変も一振りで一蹴した。試合直前のシートノックを回避。本人は「特に何も」とけむに巻いたが、疲労を考慮されたものとみられる。予定通りスタメンに名を連ねると、3回2死一、三塁の第2打席で右翼線に適時二塁打を放ち、チームに8月2日阪神戦以来8戦ぶりの先制点をもたらした。「ここ2戦はチャンスをつぶしていた。自分が流れを断ち切っていた。今日は結果につながって良かった」と本塁打よりも先制打を重視した。

 ライバルが不在の間に着々と差を縮めた。この日の2打点で打点トップのヤクルト山田(84打点)まで2打点に迫った。自らが先を行く本塁打は、2本差に広げ“2冠”到達は目前。ただ、個人記録には一切の興味を示さず「自分の数字どうこうよりもチームが勝つことが一番大事。個人記録は見ていない」とフォア・ザ・チームの精神だけを強調した。

 2位巨人との直接対決で3連敗を阻止し、今日12日からは首位広島を本拠地に迎える。「シーズン通して負けていい試合は1試合もない。全部の試合が大事。どの試合も勝ちに行く」と筒香。クライマックスシリーズ(CS)進出条件の“銅メダル”を目指しているわけではない。1つでも上、1勝でも多く、最後まで全力でぶつかっていく。【為田聡史】

 ◆藤井勇メモ プロ野球初年度の36年にタイガースへ入団した左投げ左打ちの外野手。36年5月4日セネタース戦で野口明からランニング本塁打を放ち、これがプロ野球の第1号だった。46年にパシフィック、50年に大洋へ移籍。大洋には58年まで9年間在籍し、50年に誕生した同球団の初代4番打者。50年は打率3割2分7厘、34本塁打、122打点と、自身最高の成績をマーク。55年には兼任監督を務めるも、セ記録の99敗(31勝)を喫して監督は1年限り。58年に現役引退。通算146本塁打したが、プロ野球第1号となった初アーチは19歳、最後の本塁打は41歳で打っている。