広島が25年ぶりの悲願Vへ猛スパートだ。中日戦は延長戦に突入したが、10回2死から打線がつながり、一挙7得点の「神ってる」猛攻。2死満塁で菊池涼介内野手(26)が勝ち越し中前打を放つと、押し出し四球で追加点。さらに新井貴浩内野手(39)の16号満塁弾、鈴木誠也外野手(22)のこの日2発目となる21号ソロで突き放した。優勝マジックを点灯させた24日から4連勝でM14。マジック減らし停滞なしの快速ぶりだ。

 ナゴヤドームに広島のチャンステーマがこだました。延長10回。2死走者なしから内野安打、四球などでつないで満塁だ。大声援を受けた前夜のヒーロー菊池は、追い込まれながら外角球にバットを伸ばし中堅へはじき返した。三塁走者が生還し、三塁側ベンチ前では歓喜のハイタッチ。大きな歓声とともに、完全にビジター球場を支配した。

 菊池は「みんながつないでチャンスを作ってくれた。2打席目のチャンスで打てなかったので。たまたま僕が打っただけで、全員野球でやれた」と言った。言葉通り、勝ち越し点を奪っても攻撃の手を緩めない。丸がフルカウントから押し出し四球。新井は鉄則といえる「四球後の初球」を完璧に捉え、グランドスラム。さらに、鈴木がこの日2本目の本塁打。2死から打者7人で7得点。プロ野球史上初の猛攻で、相手の反撃意欲を完全にそいだ。

 2死一塁からの松山の四球が、大量得点の布石となった。この回から登板の祖父江に2つのファウルを含め8球投げさせた。直球とスライダー主体の右腕の傾向をつかんだ。その後の4安打はすべてスライダーを打ち返したものだった。

 また接戦を制し、マジック点灯日から4連勝。3日で一気に6つもマジックを減らした。優勝から24年遠ざかる、12球団でも最長のブランクも重圧ではないかのように、快調に頂点に進んでいる。緒方監督は「追われるのもきついかもしれない」と前置きしつつ「ただ、追う方がもっときつい。それをここにいるみんなが知っている」。敗れれば差は開き、勝っても差が縮まらないこともある。昨季は追い上げながらも、最終戦で敗れてリーグ4位で終わった。長年の悔しさが、シーズン終盤の底力となっている。劇的な勝利の連続に「選手の頑張りは大したもの。異常なまでの集中力を見せてくれている」と指揮官。頂点まで、緒方広島はさらに加速していく。【前原淳】

 ▼広島が延長10回に新井の満塁弾などで一挙7点。延長回の最多得点は96年8月9日阪神が横浜戦の12回に記録した11点で、広島の延長回に7点は65年10月20日巨人戦の10回以来2度目のタイ記録だ。広島は10回2死無走者から7点。延長回で2死無走者から7点以上はプロ野球史上初めてだ。これで広島はM点灯後に3連勝。初マジック点灯後の3連勝は01年近鉄以来、15年ぶり。広島は初優勝の75年以来で、75年は10月10日にM3が点灯、3連勝目の15日に優勝を決めた。

 ▼新井の満塁本塁打は15年8月13日ヤクルト戦以来10本目(広島で8本、阪神で2本)。広島で延長回に満塁弾は97年9月27日江藤、04年10月1日緒方、08年7月27日シーボルに次いで4人目。