社会人でも「日本一」をつかみ取る。大学球界を代表するアンダースロー、早大・吉野和也投手(4年=日本文理)が1日、来春から社会人のトヨタ自動車(愛知・豊田市)入りすることが分かった。早大では8シーズン中7季でリーグ戦に登板し、2度のリーグVと1度の大学日本一を経験。今年の都市対抗を制し、投打ともタレントぞろいの強豪でもまれながら、さらなるレベルアップを図る。

 希少な長身サブマリン右腕として、多くのラブコールが届いた早大・吉野が選んだ進路先は、都市対抗連覇を狙う社会人の雄だった。今夏の東京ドームを制し、日本選手権でも4度の優勝を誇るトヨタ自動車入りへの決め手は、「日本一」への飽くなき欲求だった。「1番になりたい。2番じゃダメ。昨年の秋、明治神宮大会は準優勝だったけど、少しも喜べなかった。トヨタは1番を目指せる環境が整っている」。あえて選手層の厚い強豪の門をたたくことに、迷いはなかった。

 日本文理では田村勇磨(22=BCリーグ新潟)、波多野陽介(東北福祉大4年)に次ぐ3番手。公式戦での登板機会は限られたが、2年秋の下手投げ転向が転機となり、早大で才能が開花した。1年春の法大戦でリーグ戦デビューを果たし、ベストシーズンとなった3年春は“守護神”としてリーグV、大学日本選手権も制した。今年は東京6大学選抜で編成した日本代表として、ハーレム国際大会(オランダ)にも出場。初めて日の丸に袖を通し、4試合に登板して準優勝に貢献した。

 大学4年間を振り返り、「中学の頃から、神宮で投げることが目標だった。4年間をやり遂げて、自分に『よくやったな』と声を掛けてあげたいです」と充実感を漂わせた。高校時代の成績はオール5に近く、野球部の同学年ではただ1人、自己推薦で入学。「投げ方が特殊で、違う特徴を持っていたから、いい意味で目立つことができた」とスポーツ推薦組を差し置いて、最終学年では投手陣の責任者を任された。

 文武両道を大学でも貫き、年内で卒業単位の修得にメドが立っており、来年1月中旬からは愛知県内の合宿所に入寮して社会人のスタートを切る。現在も週6日ペースでウエートトレーニング中心に体を動かす。トヨタには次世代の正捕手候補として、中越で昨年の甲子園に出場した波方凌(19)もいる。吉野は「社会人で力をつけて、チャンスがあれば」と、夢のプロ入りへの扉もこじ開けるつもりだ。【中島正好】

 ◆吉野和也(よしの・かずや)1994年(平6)10月27日生まれ、柏崎市出身。野球は小学3年時に田尻ファイターズで始め、柏崎東中では柏崎シニアに所属。日本文理では1年秋からベンチ入りし、2年春のセンバツは背番号「11」でベンチ入りも甲子園で登板機会なし。早大では2年秋を除きリーグ戦に登板。リーグ戦通算は33試合に登板し5勝2敗、防御率2・67。社会科学部4年。187センチ、75キロ。右投げ右打ち。血液型はA。

 ◆トヨタ自動車野球部 1947年(昭22)創部。これまで都市対抗に18回、日本選手権には16回出場。最近10年は必ず優勝候補に挙がり、日本選手権は07、08、10、14年と4回制覇。都市対抗は09年に準優勝、今年は悲願の初Vを飾った。投手陣には都市対抗でもMVPに輝いたベテランの佐竹、ドラフト候補に挙がる名古屋大出身の七原らがいる。捕手は元ソフトバンク細山田と波方が来季の正捕手を争う。早大OBも佐竹、細山田、昨年の主将・河原内野手、小島外野手と多い。プロにも元ヤクルト古田、オリックス金子、中日吉見ら多くの人材を輩出。今年のドラフトでは源田内野手が3位指名で西武入り。グラウンドと合宿所は愛知・豊田市にある。桑原大輔監督(42=立命大)。