これぞ4番のひと振りだった。0-0の4回無死一塁。DeNA筒香は低めの145キロを振り抜いた。左中間席への26号決勝2ラン。「強く捉えることができました。(先発の)井納さんが素晴らしい投球をしていたので、何とか打ててよかった」とうなずいた。

 3連敗で最下位に転落して迎えた1戦。連敗中は「自分が打てていれば、違う展開になっていた」と繰り返し、責任を背負った。自分の打撃が精彩を欠くことを自覚するがゆえの言葉。不振打破のため、材質の異なるバットを手にした。

 前カード広島戦では米オールドヒッコリー社など、海外メーカーのものを使った。サイズ(33・5インチ、885グラム)と形状は、これまでのミズノ社製と同じだが、素材だけ普段のメープルより硬いハードメープル。「思ったところにバットが出ていない気がするので。写真で見るとメープルの方がしなっているんです」。一流のみが感じる誤差。頭と体の動きの差を埋めるため、しなりの少ない硬い素材を試すことを決めた。

 この日の1発は「メープルより若干硬い感じ」というアディダス社製バットで放った。自身の打撃を取り戻してきた主砲が、一夜で最下位脱出に導いた。この男のバットなしで浮上はない。「(チームは)いい方向に向いていると思う。1試合1試合、全力で戦います」と力強く誓った。【佐竹実】