人には、自分だけの記念日・特別な日というものがある。今回言いたいのは、「お正月」や「クリスマス」など全員が同じ日に味わうものとは違い、「結婚記念日」や「子どもが誕生した日」など、個人個人によって違うもののことだ。

 5年目の高口隆行内野手(26)にとって、3月30日が新たに加わった忘れられない特別な日になった。途中出場したオリックス戦(東京ドーム)で左翼スタンドにプロ入り第1号本塁打を放った。「自分がやってきたことを信じて、結果として出た」。チームが敗れ、手放しで喜ぶことはできなかったが、表情は晴れ晴れとしていた。

 05年大学・社会人ドラフト6巡目で入団。創価大から同期入団した八木が新人王を獲得するなど活躍する影で、スポットライトが当たることはなかった。08年に自己最多の74試合に出場し、オフには大学時代から交際を続けていた佳央理さんと結婚。しかし、並々ならぬ決意で臨んだ昨年のシーズンは出場わずか3試合に終わった。「今まで高校も大学も寮生活で、試合が終わって部屋に帰ると誰かがいるってことがなかったんです。料理も考えてつくってくれますし、ありがたいですね。それなのに…」。昨年オフには、ふがいない自分を責めていた。

 本塁打を放った日の夜から翌日にかけて、30件以上のメールが届いたという。「友人や先輩たちです。ニュースやネットで見てくれたんでしょうね」。返信するのは大変だが、うれしさの方が大きい。そしてなんと言っても、1番喜んでくれたのが、親と佳央理夫人。「喜んでくれましたね。(記念の)ボールは嫁に渡して今はウチにありますけど、この後は親に渡すつもりです」。1本の本塁打が、何人もの人に幸せを運んだ。

 第1号アーチから1週間が経とうとしている。「1本打ったからと言って、何が変わったということはないですけどね。またいつも通りの日々です」。毎日試合に追われるため、喜びの余韻に浸る暇はないが、あの日を境に、高口はスタメン出場を続けている。大きな節目の1日となったことは間違いない。残りの人生、高口は3月30日がくれば、2010年のあの日のことを思い出すだろう。そのときにもしも打撃不振でいたとしても、スランプを打破する1つのきっかけになるかもしれない。こんな幸せな記念日は、多い方がいい。(本間翼)

 [2010年4月3日16時12分]ソーシャルブックマーク