<オープン戦:ヤクルト2-1日本ハム>◇12日◇神宮

 高田野球の申し子がオープン戦首位打者に躍り出た。ヤクルト川島慶三内野手(24)が12日、古巣日本ハム相手に大暴れした。決勝タイムリーを含む2打数2安打、全4打席で出塁する活躍で新神宮球場のチーム初白星に貢献した。6試合連続安打で5割7分1厘まで上昇した打率は全球団トップ。日本ハムでGMを務めた高田監督がオフの大型トレードで獲得した“秘蔵っ子”が、開幕スタメンへ大きく前進した。

 川島慶に、昨年まで着ていたユニホームを着た投手との対戦を懐かしんでいる余裕はなかった。先発のダルビッシュ相手に粘りに粘って2四球を選び、3打席目には左前打を放った。そして、7回1死二、三塁のチャンス。3番手星野のシュートを無心で振り抜き左前へ運んだ。「僕に日本ハムを意識する余裕なんてないです。1軍に残れるか残れないか。そういう選手ですから」。決勝タイムリーで新装した神宮球場初白星をもたらした。

 5割7分1厘という驚異の数字で、オープン戦の打率トップに立ったことを知らされても、川島慶の口から気の利いた言葉は出てこなかった。「そうなんですか?

 別に何も…」。打率よりも、1番打者として4打席すべて出塁できたことの方が「うれしい」と言い切る。出塁率は断トツの6割4分に達した。目標の開幕スタメンを猛アピールし「ヒットじゃなくてもいい。どんな形であれ出塁することが大事ですから」と笑みを浮かべた。

 高田監督と川島慶の縁は深い。日本ハムGM時代に、九州国際大の試合を視察した際に素質を見抜き、05年のドラフトで指名。そして、今年1月の3対3のトレードで、日本ハムでの2年間で出場機会に恵まれなかった川島慶を、先発ローテの一角・藤井を放出してまで獲得した。秘蔵っ子の大暴れに高田監督は「ダルビッシュから打つんだから。今のバッティングならレギュラーをとってもおかしくない」と目を細めた。

 川島慶はチームの再建を託された高田監督が目指す機動力野球を体現できる選手でもある。四球で出塁した初回、2番田中の中前打で一気に三塁へ。鮮やかなエンドランを決めて、ダルビッシュのリズムを崩し先制のホームを踏んだ。今年のチームの愛称“チョロ9”にふさわしい攻撃だった。「毎日しんどいですけど、野球が楽しいです」。最下位から巻き返しを図るヤクルトに、頼もしい1番打者が誕生した。【広瀬雷太】