<楽天2-3横浜>◇19日◇Kスタ宮城

 楽天山崎武司内野手(41)がまた偉業を打ち立てた。横浜戦の2回。メジャー帰りの大家から右翼席に2試合連発となる7号ソロをライナーで突き刺した。本塁打を放った投手が、通算200人。開幕当初は不振に苦しんだ「中年の星」が、再び輝き始めた。

 いかにも山崎、の低空で、白球が五月雨を裂いた。初速のまま薄もやがかかるKスタ宮城の右翼ポール際へと進み、かすめるようにスタンドに届いた。横浜大家から放った2回の先制7号ソロは、球史で4人目の「200人斬(ぎ)り」だった。惜敗に「知らなかったよ。長いことやってるからね。でも負けちゃったから」と感慨もなかったが、プロの世界で四半世紀も研さんしてきた技術が詰まった節目のライナーだった。

 外角のカットボールを「本当にうまく打てた」。解説は「左手でつかまえて、右手がちょっとだけ返った。だから切れないと思った」。この言葉に、山崎だけが持つテクニックが集約されていた。右手が完全に離れ、一見左手一本で打ったように見える独特のフォロー。だがインパクトの瞬間、素手で握ったバットの右手で、ボールを押し込んでいた。寒空の中でも変わらず、この試合に出場した両軍の右打者でただ1人、右手に手袋をはめない。ここに秘密があった。素手で握った右手の指は、小刻みに動かしタイミングを計るほどゆるゆるにしている。

 右打者の後輩に打撃のアドバイスを送るとき「どっちの腕で打ってる?」と聞く。大概「右腕です」と返ってくるが「違うよ。左で打つんだよ」と説く。左ひじから先でバットをリードすれば、最短距離でボールがつかまる持論。右手は最後の最後、ひと押しのためにとっておく。多くのロングヒッターが追い求めるスタイルを手中にしているのは、自身のルーツにあった。

 左利き右打ち-。同タイプに巨人坂本がいて、内外角を苦にせず器用に左手でさばく点が共通している。加えて山崎には中学卒業時、相撲部屋にスカウトされたほどの剛腕がある。確立した打撃技術に、円熟の読みも重ねる。「ミーティングで外角中心の動かしてくるボールを、逆方向に打とうという話があった。頭にあったよ」とすらりと答えた。天賦(てんぷ)の才、技術、頭脳。三位一体で200人との勝負を制してきた。【宮下敬至】

 [2010年5月20日11時50分

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