<阪神8-3広島>◇25日◇甲子園

 ホンマに奇跡じゃないで~。負けられない阪神が、今季40度目の逆転劇で広島に快勝した。右肩痛の影響でスタメンから外れていた金本知憲外野手(42)が「7番左翼」で先発復帰。“弟分”新井貴浩内野手(33)が、1点を追う1回、逆転の19号3ランを放って2連勝だ。デーゲームで中日が勝ち、負ければマジック点灯の危機を阻止した。残り9試合、この勢いで突っ走る。

 打つ。新井の頭の中は、その思いだけだった。負ければ「優勝」の2文字が一気に遠のく大事な一戦。1点を追う1回1死一、二塁。広島ジオの内角球を豪快に振り抜き、逆風を切り裂くように左中間席最深部へ。「久しぶりに会心のあたりでした」と、両手には忘れかけていた完ぺきな感触が残っていた。

 1日の横浜戦以来となる19号は、4番に座ってからは今季初の逆転弾。20試合、86打席ぶりとなる1発は、苦しんだ分だけ、喜びも倍増した。着弾点に何度も視線を運び、余韻をかみしめるようにダイヤモンドを1周した。「点を取られたあとだったので、何とか走者を返したい。僕らはもうあとがないんでね。勝ち続けるしかないんで」と言い切った。

 貫き通した「信念」が、ここ一番で生きた。優勝争いが激化した球宴以降、各球団から徹底した内角攻めを受けた。その影響からか、死球の数がプロ入り初めて2ケタを記録。体にはいくつもの“死球痕”が残る。「内角を狙い打つことで、内への攻めを減らせる。内も打てることを身に付けておけば、役に立つ時も来るだろ」。気付けば弱点だった内角打ちを克服。この日の1発は、右腕をたたみ込むようにして放った、迷いのないスイングだった。

 打点が07年広島時代の102を上回り、自己最高の105となった。だが個人記録など興味がない。「そんなことはどうでもいい。それより、最後の最後までしびれる試合ができるのは、肉体的には大変だけど、選手冥利(みょうり)に尽きる。最後まであきらめず、信じて戦い抜きたい」。4番の視線の先には「優勝」の2文字しか見えてない。【石田泰隆】

 [2010年9月26日9時31分

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