<オールスターゲーム:全パ5-0全セ>◇第3戦◇24日◇Kスタ宮城

 全セ先発のヤクルト由規(21)が、宣言通りの直球勝負に、東日本大震災からの復興の願いを込めた。地元仙台での第3戦に先発し、最速155キロで2回2失点。日本ハム稲葉に2ランは浴びたが、プロ同期生の日本ハム中田は全球直球で投ゴロ併殺打に打ち取った。左脇腹筋膜炎から1軍未登板のままのぶっつけ先発で、先発投手最多20万6453票を集めた期待に、全力投球で応えた。試合は全パが勝利。通算成績を77勝71敗9分けとした。

 地元球宴を待ちわびた仙台は、朝から青空が広がっていた。2万1347人の野球ファンが集まった。

 4年前は雨だった。

 07年。仙台育英高3年だった由規は、地元オールスターのチケットを持っていた。既にドラフト候補投手として名をはせた。周囲への遠慮もあって、観戦は断念した。空港から町への情景などが一変した、4年後。特別な年に、先発投手としてマウンドに立った。「今までで一番緊張したかもしれません。マウンドに上がる前は、声援が聞こえたんですが、上がったら聞こえなくなった」。

 相手が分かっていると知っていても、約束通り直球勝負を挑んだ。2回無死一塁、打席にプロ同期生の日本ハム中田を迎えた。

 初球、この日最速の155キロを投げ込む。バックスクリーンのスピード表示に、球場のボルテージが上がる。3球目も155キロ。最後は外角への152キロで投ゴロ併殺打に打ち取った。「(中田)翔の時は力が入った。結果的にゲッツーに打ち取れて良かったです」と喜んだ。全25球中23球が直球。20球が150キロを超えた。

 東日本大震災の影響で、開催地が東京ドームから変更になった。「巡り合わせ、縁を感じる」と繰り返した。その中で、6月9日に左脇腹を痛めた。当初は軽症と診断されたが、周辺の違和感が消えない。患部の痛みは和らいでも「別の所が張る」と漏らした。復帰が遅れ、地元オールスターに出場できない不安と闘ってきた。

 それでも20万人以上のファンが、由規に票を投じた。2軍戦2試合で、1軍登板がないまま迎えた本番。「投げられたことに感謝」とかみしめた。スタンドには東日本大震災で亡くなった仙台育英高の1学年先輩、斎藤泉さん(享年22)の両親を招いた。高2の夏に、バッテリーを組んで甲子園出場を決めた球場。少年野球チームの後輩たちも集まった。

 試合後は、選手たちと一緒に球場を1周した。地元開催の主役は「仙台の方に見せられて良かった」と感謝した。プロ入り後、雨天中止がない晴れ男が、特別な球宴で、25球に思いを込めた。【前田祐輔】