大詰めを迎えている横浜の球団売却問題に、新たな動きが浮上した。横浜市内にも路線を持つ京浜急行電鉄(本社=東京・港区)やミツウロコ(本社=東京・千代田区)を中心として、横浜市に縁のある複数の企業が連合チームを作り、球団買収に乗り出すことが19日、明らかになった。自治体からの支援も約束され、今後は球団の親会社であるTBSホールディングス(HD)と交渉を本格化させたい考え。TBSHDは現在、ゲームサイト「Mobage(モバゲー)」の運営会社ディー・エヌ・エー(DeNA)と、今月中の決着を目標に交渉を続けている。地元の動きで、今後どのような影響が出るか注目される。

 横浜球団の売却問題が新展開を迎える可能性が出てきた。TBSHDとDeNAの交渉が大詰めを迎えている時期に、地元に関係の深い企業が立ち上がった。京浜急行電鉄やミツウロコ(エネルギー関連企業)を中心とする、横浜に関係の深い複数の企業が協力し、TBSHDに対し球団を買収したい意思を伝える。

 京浜急行の石渡恒夫代表取締役社長は19日、取材に対し「そんな話は聞いていません」と否定した。ただ、ここまで水面下で検討していたものの社内の意見はまとまっている。今後は本格的な交渉に移りたい考えだ。

 構想では将来的に横浜駅に程近い「みなとみらい地区」にドーム球場の建設を実現し、本拠地にするというもの。現在の横浜スタジアム付近に京急線の駅はないが、新球場になれば本業へのメリットも大きくなる。すでに市内の会社経営者らで「横浜ドームを実現する会」が活動しており、球団買収により、これらの動きを加速させたい考え。横浜市など自治体から「全面的に協力する」という言質を得ているという。

 ただ、出遅れた感は否めない。すでにTBSHDとDeNAの交渉は大詰めを迎えている。両社は今月末の発表を目指して交渉を進めている。

 ただ、京急を中心とした地元グループは球団名も「横浜ベイスターズ」のままで、本拠地も横浜スタジアムのままで予定している。野球協約では11月30日までに実行委員会およびオーナー会議の承認を得る必要があると定めているが、変更点が少ないことから期間を大幅に遅れても認められる見込み。時間的な余裕はあり、今オフにまとめることは十分に可能だ。

 また、他球団の中からはDeNAの参入に対し難色を示す声も上がっている。長期保有の可能性に対する疑問や、12球団で行っているゲーム会社へのライセンス事業への影響が理由に挙げられている。

 今回、地元に縁の深い企業グループが名乗りを上げたことで、DeNAの交渉にも影響を及ぼす可能性も出てきた。昨年から続く横浜の球団売却騒動は、ここから大きく動いていきそうだ。

 ◆京浜急行電鉄

 1898年(明31)2月25日、大師電気鉄道株式会社として設立。翌99年、六郷橋-大師間の2キロで営業し、社名を京浜電気鉄道に。31年(昭6)、野毛山をトンネル開通し、高輪-浦賀間がつながる。48年に現社名となる。交通事業のほか、不動産事業、レジャーサービス事業なども行う。10年3月31日現在、従業員は1498人。石渡恒夫社長。資本金は437億円。本社は東京都港区高輪2の20の20。【横浜球団身売り問題経過】

 ◆01年11月

 実行委員会で、筆頭株主のマルハからニッポン放送への変更が了承。だが、同放送と同じフジサンケイグループに属するフジテレビがヤクルト球団の株を保有していたため、了承は差し戻された。

 ◆02年1月

 TBSが筆頭株主になることが実行委員会およびオーナー会議で承認された。譲り受け球団に課されていた30億円の加盟料は特例として免除。

 ◆10年10月

 TBSが住宅設備大手の住生活グループと売却交渉を行っていることが判明。最終段階まで交渉は進んだが、本拠地の移転問題などが原因で、同27日に交渉決裂が発表された。

 ◆11年5月

 TBSHDの神成取締役が、決算発表で「今はオーナー企業としての責任を果たし、全面的にバックアップしたい」と強調しつつ「もし(買収を)希望するところがあれば、お話はうかがいたい」と売却に含みを残した。

 ◆同10月1日

 横浜の親会社であるTBSHDの石原社長が、複数の企業と球団売却交渉を進めていると認めた。

 ◆同3日

 DeNA守安社長が取材に応じる。「今の時点でお話しできることは何もありません」と交渉事実や内容には言及せず。

 ◆同18日

 巨人渡辺球団会長が、横浜の売却先がDeNAで決着するとの見解を示した。

 ◆同19日

 DeNAが「交渉中であることは事実」と、TBSHDとの交渉は認めた。