<セCSファーストステージ:ヤクルト3-2巨人>◇第1戦◇29日◇神宮
セ・リーグのクライマックスシリーズ(CS)ファーストステージが開幕した。
勝負どころを知り尽くすベテランが、ヤクルトに決勝点をもたらした。同点の6回、1死満塁の好機。ヤクルト宮本慎也内野手(40)は、見逃せばボールだったかもしれない低めの球に必死の形相で食らい付いた。センターへ高々と打ち上がった飛球の飛距離は十分。犠牲フライで、勝ち越しの2点目が入った。どんな状況でも、泥くさく懸命にプレーする宮本らしい一打だった。
本来なら、傷ひとつない、真新しいバットで試合に臨むはずだった。特別な試合では必ず新しいバットをおろしてきた。前夜も、新品を枕元に置いて眠りについたという。しかし、この日に限っては、大事な商売道具を家に忘れてきてしまった。そんな“失態”も、ポジティブに受け止められる強さがある。「新しいバットを使うより、今までのバットを使いなさい、というお告げなのかな」。シーズン終盤の苦しみが詰まった、傷だらけのバットでチームに勝利をもたらした。
故障者が続出する苦しいチーム状況の中、宮本も両太ももが肉離れ寸前になりながら出場を続けている。ボロボロの体を“心”で支える40歳は「(日本シリーズまで最大で)あと15試合は持つと思う。毎日毎日、疲れ果てるまで全力で、気持ちを出して戦っていきます」と、言葉に力を込めた。「試合前のミーティングで何か言ったのか?」の問いには笑顔でこう答えた。「何も言ってないですよ」。チームリーダーの思いは、仲間にもしっかりと伝わっている。【広瀬雷太】



