<日本ハム4-5オリックス>◇5日◇札幌ドーム

 日本ハムがオリックスに競り負け、首位から陥落した。打線は糸井嘉男外野手(30)、ターメル・スレッジ外野手(35)の適時打などで終盤に3点差を追いつく粘りを見せたが、9回に武田久の代役として新守護神となった増井が失点し接戦を落とした。4月25日に勝って以降守ってきた首位を明け渡したが、劣勢をはね返す執念は見せた。

 両膝に手を突いて悔しがる中田と同じように、スタンドのファンも飛び上がって残念がった。3点差を追いつきながら、9回に左犠飛を打たれての敗戦。栗山英樹監督(51)は「選手はよくやったよ。だからこそ、勝たせてあげたかったなぁって。オレがね」と悔やんだ。だが、ゴールデンウイークに野球観戦を選んだファンは、4時間に及ぶ極上のエンターテインメントを堪能できた。

 ドラマの始まりは3点を追う7回だ。相手の暴投で1点を返すと、さらに2死三塁から、糸井が左中間を破る適時打。一塁ベースを踏み損なう“演出”があって単打となったが、踏み直してから二塁に滑り込むと歓声がドーム内をこだました。「打球を見過ぎました」と苦笑いだが、スタンドは大興奮。続く8回にはスレッジが同点打でボルテージは最高潮に達した。

 今季13度目の敗戦だが、そのうち2点差以内の負けが12。俗に言う「壊れた試合」が1度もない。栗山監督は「勝てるゲームをみてもらいたい。ファンの方には申し訳ない」と頭を下げたが、一時は3点のビハインドをはね返したスリリングな展開は、ファンを納得させるに十分だった。

 監督室のモニターは札幌ドーム入場口に備え付けられているカメラの映像を見ることができる。ファンの行列を見た栗山監督は「力になるよね。その瞬間瞬間に、全力でやらないといけない。プロ野球にはその使命がある」と言った。敗戦の中にも次戦へとつながる光はあった。こどもの日を球場で過ごした野球少年たちの目に最後まであきらめない日本ハム野球は、しっかりと映っていた。【本間翼】