<巨人3-9ヤクルト>22日◇東京ドーム

 長いトンネルを抜けると、クライマックス・シリーズ(CS)が目前にあった。ヤクルト石川雅規投手(32)が7月4日の中日戦(神宮)以来となる7勝目を挙げた。11安打を浴びながら7回を1失点で切り抜ける粘り強い投球。打っても、ヤクルトでは83年の松岡弘以来となる1イニング2安打で、大量点に貢献した。石川の復活で4位広島とのゲーム差を7に広げ、CS進出までのマジックを5とした。

 歓喜というよりも安堵(あんど)が一番の感情だった。久しぶりに味わう勝利の瞬間に、仲間とかわすハイタッチ。その時も石川は笑いきれなかった。「全然仕事してなかったから、情けない気持ちが強かった。長かったですね」。11試合ぶりの白星は、これまでで最も長いブランクになる。チームメートに迷惑をかけ続けてきたという気持ちにさいなまれていた。

 もがき続けた2カ月半だった。不調のためローテーションから外れて再調整し、満を持して臨んだマウンドでも勝てなかった。投球フォームを10年続けてきたセットポジションからノーワインドアップに変えてみたこともあった。「何かを変えてみないことには始まらないですから」。シーズン中に走り込みを行ったのもその1つ。巨人をノーヒットノーラン寸前に追い込んだ開幕戦の映像も、何度も見た。これまで捕手のサインに首を振ることはほとんどなかった男が、この日は勝負どころで首を振って投げ込んだ。

 実は、ブルペンでは状態が悪く、投球のバランスを崩していた。「ムーチョ(中村)、どうしよう。任せた」。捕手の中村に頼る弱音も吐いていたが、マウンドに上がると顔つきを一変させた。「目の前で胴上げを見せられた悔しさがあった。僕は家でテレビで見ていたんですが、すぐにチャンネルを変えちゃいました」。長きにわたってヤクルト投手陣を支えてきた意地が、力になった。

 石川の復活は、CSを目指すチームにとって、解決しておかなければいけない宿題のようなものだった。小川監督は「どんなにいい投球をしてようが、とにかく勝ちがつかないと、精神的ダメージを受けたりトラウマになったりする。石川という経験豊富な投手でも同じこと。本当に良かった」と、目を細めた。この日の白星には、1人の投手を立て直す、大きな価値があった。「(CSを勝ち抜いて)またここで巨人と試合がしたい」という石川の願いも、1歩、実現に近づいた。【竹内智信】

 ▼ヤクルト石川がイニング2安打のプロ野球タイ(多数あり)。投手では昨年4月23日の中田(広島)以来で、最近30年では5人目。石川はイニング2得点も同時にマークした。投手のイニング2安打&2得点はムーア(阪神)が03年4月12日の巨人戦で記録して以来9年ぶり。