トーク力も欲しい!

 ソフトバンク松田宣浩内野手(29)が7日、滋賀・草津市の母校、老上小で行われた市教育委員会の企画「トップスペシャル授業」で登壇した。児童421人に夢を持つことを伝え始めたが、“ネタ不足”のため開始3分でSOS。急きょ、講演から質問形式へと内容を変更するなど、笑い満載、ほろ苦の先生デビューとなった。

 短いマイクがやけに重く感じたはずだ。今季打率3割。バットを持てば快音連発の松田が「授業」でたじたじだった。「小学校の時から夢を持ち続けて生活すると、夢は実現できます」。当時の思い出として「フルートが吹けず泣いた思い出があるのと、歌をうまく歌えなくて…」と展開しようとした矢先だ。5秒の沈黙を挟み、「先生~、30分は長いです!

 持ちません!」とSOSを出した。

 開始3分、まさかの“ネタ切れ”KOだ。双子の兄教明さんの担任だった五十嵐信博校長(56)に助け舟を求めると、体育館は爆笑の渦に包まれた。30~40分間の講演予定だったが、校長が「急にメニューが変わりました」と苦笑いで登壇。インタビュアーとなり、幼少時からのエピソードを聞き出すという、はちゃめちゃな展開になった。

 小学4年から下校時に約1キロの通学路を走ったこと。中学時に野球をやめようと思ったこと。1試合で2失策、2三振して悔し泣きした試合で王監督に「胸を張れ」と言われたこと…。質問形式になってからは元気回復。児童から「プロになった今の夢は」と聞かれ、「先生になりたい。今日話せず、悔しかったので」と独特のマッチ節も飛びだした。

 「トップスペシャル授業」は各界の一流から、夢や希望を持ち、実現するために努力することの大切さを学ぶもの。卒業以来17年ぶりに「先生」として凱旋(がいせん)した松田は「あいさつすること、楽しむこと。これを一番伝えたかった」。ただ、自分の言葉で伝える難しさを経験できたのも収穫。「話を広げないといけません。質問されて答えるのはできるけど、1人でしゃべるのは難しい」。来季はトーク力にも磨きをかけ、プロとして幅が広がるはずだ。【押谷謙爾】