日本ハムのドラフト1位大谷翔平投手(18=花巻東)が、またしても「二刀流の苦悩」に直面した。5日、今キャンプ初めて遊撃の守備位置に就き、けん制、サインプレー練習に参加した。慣れないポジションであるとともに、アマ時代とは違い、複雑な動きが求められる実戦形式の練習に困惑気味。「エース兼4番」となるためには、投手としての動きに加え、野手としての動作やサインも把握しなければならず、覚えることは人の2倍。投打の練習を行う身体的なハードさに加え、頭脳的にもハードな挑戦となる。

 大谷の頭上には「?マーク」が浮かんでいた。初めて参加したけん制、サインプレー練習。中学以来となる遊撃手のポジションに就いたが、勝手がわからず、ミスを繰り返した。「動きを合わせたりするのが難しいです。ショートに入るのも初めてだったので…」。約20分間のメニューの中で、3度も首脳陣のストップがかかり、選手がマウンド上に集まってミーティングを繰り返した。

 二刀流に挑戦する大谷にとっては、他人の2倍をこなさなければならない練習量の問題以上に、大きな壁かもしれない。無死一塁や一、二塁を想定し、けん制やバントシフトを敷くサインプレーの練習。内野手専門の新人でも、レベルの高さにとまどうとされる高度なメニューだが、さらに大谷は高校時代に内野をやっていない“ハンディ”もある。「サインは頭に入っていた」というが、動きだしのタイミングや意図がわからずに大苦戦。しまいには、自分から投手へ送るサインすらも出し間違えてしまった。

 付きっきりでアドバイスした金子誠は「まだ1つ1つの(動きの)意味がわかっていないと思う。誰がキーマンになるのか、など。(試合を)イメージしてやらないと」と話す。サインと動きは頭に入っていても、実際に実戦形式で動いてみなければわからない部分は多い。同じプレーでも、投手としての動きだしと野手での動くタイミングも違うため、大谷はその両方を体に染みこませなければならなくなる。

 サインもそうだ。この日のように守備で使うサインに加え、大谷は投手として、捕手と球種を決めるサインも覚えなければならず、また打者としては攻撃のサインもインプットする必要がある。今日6日には試験のため、1度、岩手・花巻へと戻る予定だが「(試験の)勉強をする暇があったらサインを覚えます」という言葉も冗談半分ではない。二刀流への挑戦は、数多くの困難に立ち向かわなければならない。【本間翼】