阪神新井良太内野手(29)がエース能見から「虎1号」を放った。6日、今キャンプ初めて行われた実戦形式のシート打撃で左中間スタンドへ弾丸ライナー。WBC日本代表候補の左腕に「ショックです」と言わしめた。鳥谷、福留、コンラッド、兄・貴浩らをおびやかす主砲候補としてド派手なアピールとなった。

 宜野座球場に衝撃が走った。新井良はやや高めのストレートを完璧にとらえた。2ボール1ストライクからエース能見が投じた4球目。打球は左中間スタンドの芝生へドスンと突き刺さった。

 「真っすぐ系を狙っていました。真っすぐを引っ張れたのがよかった。能見さんには『打てるところに投げてやった』と言われました。まさにその通りです」

 昨季、虎の4番を務めた男がさらなる成長を感じさせた。打者はキャンプ中にスピンのきいた速球を打ち返せるかどうかを1つの目安にする。この日の相手はWBCのためにハイペース調整で仕上げている能見だった。虎が誇るエースの直球を、第1クールから完璧にはじき返した。

 「良太に打たれるなんて。ショックです…」

 能見は練習後、報道陣に苦笑いで本音を打ち明けた。この日は抜け球が多いなど、疲れも見え隠れしていたが、新井良の成長を肌で感じたに違いない。

 昨季は順位がほぼ決定した終盤戦で4番を務めた。本人は「ただの4番目、今年はまたゼロから」と1軍生き残りへ必死だが、周囲の期待は自然と高まる。右肩のリハビリで回復途上の新井、新戦力の福留、コンラッド、好調マートンもいるが、新井良が劇的な成長を遂げれば、主軸に抜てきされてもおかしくない。

 「去年よりも低い弾道で入るというのが違ったところですかね」

 昨季はシーズン通してウエートトレーニングを行い、オフは金本氏に弟子入りして鋼の肉体づくりを目指した。その成果が早くも出た。今年の良太は何か、どでかいことをやらかす…。そんな空気が宜野座に漂っていた。【鈴木忠平】