<阪神2-0巨人>◇9日◇甲子園

 開幕7連勝中(1分け挟む)の「無敵ジャイアンツ」を止めたのは、虎だ。今季初の「伝統の一戦」。ワールド・ベースボール・クラシック(WBC)準決勝プエルトリコ戦では被弾した阪神能見篤史投手(33)が巨人を5安打10奪三振に抑え込み、12球団一番乗りの完封勝ち。お立ち台では昨年、騒動を引き起こしたマット・マートン外野手(31)から「ノウミサン、アイシテル」の“和解宣言”まで飛び出した。

 勝利のお立ち台が、「公開和解」の場に変わった。能見とマートンが並んだ。まずは能見が「ナイスバッティング!

 ありがとうございます」と感謝する。次に先制打を含む3安打のマートンにマイクが向けられる。「チョットマッテ、チョットマッテ」とインタビュアーを制しながら「ノウミサン、アイシテル~!」と抱きついた。

 事件は昨年6月9日オリックス戦後だった。緩慢な守備を報道陣に問われたマートンが「アイ

 ドント

 ライク

 ノウミサン」と発言し、物議を醸した。忘れたい過去をあえて「2人でお立ち台に上がると分かって、いいタイミングだったし、今日で(騒動を)終わらせられたらと思ったんだ」(マートン)。

 最後の最後で大きな笑いに包まれたのは、もちろんWBCに出場した左腕の快投があったからだ。ヤマ場はちょうど100球目。8回2死一、三塁で長野に対する。3ボールから全力で左腕を振った。やや高めの141キロで、力のない一飛に退けた。「助かりました」。クールな左腕の表情が、一瞬ほころんだ。

 「甲子園の初戦でお客さんも多かったということで、何とか勝利を、と最初から全力でいきました」との言葉通り、1回から全力で腕を振った。1回先頭の長野を直球で見逃し三振。2死からは坂本を外角低めの直球で空振り三振に仕留めた。2回は先頭阿部をインコース直球で見逃し三振。WBCで共闘した侍たちを寄せ付けず、三振の山を築いた。序盤5回までで毎回9個ものKマーク。「おかげで8、9回は疲れましたね」。苦笑いの表情さえ、108球を1人で投げ抜いた充実の証しだった。

 フォーク主体で攻めていたこれまでのイメージを逆手に取り、スライダーを多めにした配球で臨んだ。WBCでの経験も影響し「このごろコントロールがいい」という新たな代名詞を武器にした。リードした藤井彰との二人三脚で、巨人キラーの本領を発揮した。

 昨年に続き、シーズン初勝利は甲子園初戦・巨人戦での完封。球団新記録を阻止する勝利にも「ここからが大事なんでね」と気を引き締める。おまけにマートンとの“電撃和解”もあり、エースが気持ち新たに13年シーズンを走りだした。

 ◆マートン問題発言メモ

 昨年6月9日阪神対オリックス3回戦(甲子園)。1点を追う4回2死二塁の守備で、前進守備のマートンが右前打を捕球したが、本塁へ悪送球の間に失点。試合後「I

 don’t

 like

 Nohmi-san.

 ニルイドウゾ。Go

 ahead」と発言。「能見サンが嫌いだから、二塁走者をかえした-」ともとられかねない内容だった。