<中日0-3巨人>◇4月30日◇ナゴヤドーム

 背番号18で連敗ストップだ。巨人杉内俊哉投手(32)が今季初完封で3勝目、チームの連敗を4で止めた。スタメンに右打者を7人並べた中日に対し、内角をしつこく突く投球。被安打5で危なげなかった。普段はプレート板の一塁側いっぱいを踏むが、この日は20センチ中央に寄せ、宝刀スライダーの食い込みをより鋭くした。自身通算20度目の完封で奪三振は最少の2個。頭脳で竜を黙らせた。

 トレードマークの三振は必要なかった。杉内が新しいスタイルを見いだした。自身20度目の完封勝利。内野ゴロと飛球で次々とアウトの山を積み上げる。中日打線を5安打に沈める投球に「9連戦で4連敗中だったので、なんとか次の投手にいい形でつなげたかった。いや~、疲れましたね。でも気持ち良かったですよ」と、いかにもベテランらしいコメントで勝利の味をかみしめた。

 明確な変化はプレート板に置く左足にあった。ここまでは一塁ベース側いっぱいだったが、この日は、ほぼ中央に置いた。三塁ベース側に約20センチ動かした狙いは「インコースに投げやすくするためですね。特に右打者」と説明。今週のブルペン調整で川口投手総合コーチからの助言を受けて取り入れ「半信半疑でしたけど、うまくいったと思います」と、手応えを示した。

 アウトの詳細をなぞれば、効果てきめんだったことは明らかだった。相手は先発吉見を含め7人の右打者を並べてきた。象徴的だったのは、1回1死一塁から右打ちの名手井端を膝元に食い込むスライダーで仕留めた三ゴロ併殺だ。三塁手の村田が「内角の変化球を詰まらせて打ち取ろうという意識がはっきり分かった」と話すように、右打者には徹底してインコースに投げ込んだ。

 たかが20センチは、特に杉内の場合、されど20センチになる。縦に変化するスライダーが球界の主流の中、打者の手元から、文字通りスライドして食い込んでくる宝刀。プレート板での20センチ差は、18・44メートル先のホームベース上でもそのまま平行移動して、鋭利な凶器と化す。この日は全126球中、スライダーを半数以上の68球も多投した。懸念材料だった直球も最速145キロをマークし「直球は今までで一番、良かった」と納得の表情。チェンジアップをほとんど使わずに最後まで投げきった。

 チームの連敗を4で止め、今季自身負けなしの3勝目をマーク。本調子からの好転を目指してきた、ここまでの登板とは、意味合いが違う快投劇。復調ではない。まだまだ進化していく杉内の姿がマウンドにあった。【為田聡史】

 ▼杉内が昨年5月30日楽天戦以来、通算20度目の完封勝ち。現役投手で20度以上の完封勝ちは山本昌(中日)30度、三浦(DeNA)22度に次いで3人目。中日戦は初完封となり、これで杉内が完封勝ちした相手は7球団目。現役投手で7球団から完封は渡辺俊(ロッテ)田中(楽天)に並び最も多い。この日は奪った三振が2個だけ。杉内は2ケタ奪三振の完封を9度記録するなど、これまで完封試合の平均奪三振数は9・9個。完封試合では過去2度あった7個を下回る最少と、この日は打たせて取る投球で0点に抑えた(勝利試合でも2奪三振は最少タイ)。