<中日0-3巨人>◇1日◇ナゴヤドーム

 主将の一振りで9連戦の勝ち越しに成功だ。巨人阿部慎之助捕手(34)が8回、2試合連続の8号2ランを放ち、中日との接戦にケリをつけた。坂本の内野ゴロでようやく1点を先制した直後、右中間スタンド最深部に放り込む豪快な本塁打だった。試合後は自らの本塁打を傍らに置き、好投した先発沢村をねぎらった。34歳の主将に円熟味が増していく。

 独り善がりな派手なガッツポーズは皆無だった。阿部が、またしても試合を決めた。8回2死三塁、1点リードした直後の打席。中日2番手田島に対し、ゆったり構えた。1度もバットを振らずに迎えた5球目。ど真ん中に入ってきた144キロ直球を一振りで捉えた。「とにかく、もう1点なんとか打てるようにと思って打席に入った。打った感触は良かった」と、2夜連続となる8号2ランを淡々と振り返った。

 この日は緊迫した投手戦。マウンドの沢村が、必死に踏ん張っていた。「沢村が頑張っていた。もっと早く助けてあげられたら。それが僕たちの課題です」と、大学の後輩でもある右腕を気遣った。さらに3番手のマシソンが1死一塁で制球を乱すと、マウンドに駆け寄り穏やかな表情で話しかけながら肩をもみほぐした。山口、西村を含む4投手での無失点継投に「みんなでつないで勝てた。それが一番良かった」と、額に汗をにじませながら喜んだ。

 巨人の主将であり、球界のトップ選手に上り詰めたからこその成熟があった。昨季の日本シリーズでは、マウンド上で沢村の頭をひっぱたくなど、若手選手に対しては叱咤(しった)激励が目立った。だが、今季は別人になった。「調子が悪いなりに何とかしてあげるのが僕の仕事」「僕の眼力が足りなかった」「頑張っていても、点を取られることもある」。投手の明らかな乱調で敗戦しても一貫して自らが矢面に立ち責任をかぶる。

 厳しさだけではなく優しさ、思いやりを表現するようになった。同じことをやっては連覇はできない。進化から深化へ-。原監督も「彼がチームリーダーであることに変わりありません。これからもチームを引っ張っていってほしい。久しぶりにすごい打球を見た」と、大将の姿に目を細めた。【為田聡史】

 ▼阿部がスコア1-0の8回に2試合連続の8号。今季、1点リードした場面で打席に立った阿部は三振、中飛、三振、中飛、四球、左安、右本、右本、四球、右本、中安、右安、右本と、11打数7安打、4本塁打、打率6割3分6厘の大当たり。4月13日ヤクルト戦から1点リードの場面では4本塁打を含む7打数連続安打中だ。阿部は昨年までナゴヤドームではプロ12年間で通算8本塁打しかなかったが、今年は最初の3連戦で2発。ナゴヤドームの3連戦で2本打ったのは初めてになる。