<阪神7-6ヤクルト>◇4日◇甲子園

 苦しんで、苦しんで、やっと勝った。開幕ローテ入りしながら3連敗。2軍落ちの試練からはい上がった阪神岩田稔投手(29)が復活の今季初勝利だ。ここまで3試合いずれも失点していた初回、先頭打者を新井良のエラーで出塁させたが1死一、三塁から踏ん張って無失点。その裏、打線から6点のご褒美をもらって、6回を7安打2失点で乗り切った。

 試合終了直前、岩田は真一文字に唇を結び、一塁ベンチ奥に座っていた。悔しさがにじみ出ていた。

 「自分にとってはすごく大きな1勝です。でも大量援護があったし、最低でも7回は投げないと。先発の役割としては物足りない」

 開幕から3戦3敗。4月14日、開幕ローテ入りした08年以降、初めて不振での2軍降格を経験した。21日ぶりの1軍マウンドは初回の6得点にも助けられ、6回7安打2失点。13年初星は甘酸っぱい味がした。

 4月14日。大阪桐蔭の後輩でもあるルーキー藤浪が初勝利をあげ、西岡と甲子園のお立ち台にあがった。その数時間前、2人の同校先輩にあたる岩田は鳴尾浜で自虐的につぶやいた。

 「努力が報われないことってあるんやな…。いっそのこと、努力せん方がいいタイプなんかな?」

 もちろん、本心であるはずがない。前日13日。5回6失点KOされ、2軍降格を言い渡された直後。ふがいない自分への怒りをぶつけた場所は、大阪府内の自宅近くにあるスポーツジムだった。プールトレで体をいじめ抜き、家族の元へ。冷蔵庫を開けた瞬間、置きっぱなしの缶チューハイを見て、決意を固くした。

 「ここで飲んだら、去年までと一緒になる」

 今年、岩田はアルコールを口にしない。昨季までは「よく眠れるから」と、先発前夜は必ず缶チューハイを飲んでベッドに入った。試合後の飲酒も当然あった。それが今年、「何かを変えたい」と酒を断った。ヤケ酒なんて、もってのほかだ。オフから頼れる専属トレーナー2人に師事を仰ぐ。報われなければ、それ以上の努力をするだけだ。

 2軍調整中には神社へ厄よけに出向き、この日は膝下までストッキングを見せるクラシックスタイルで登板。「何かを変えないと」。プレートに立つ位置も一塁側から三塁側に変えた。

 日高と今季初コンビを組み、今季3試合すべてで失点していた初回を耐えた。味方失策と不運な安打からの1死一、三塁で4番バレンティンを一邪飛、5番畠山を遊ゴロに仕留めた。

 ただ、しっかり軸足に力をためる新フォームは「まだ、しっくり来ていない」。和田監督も「うちの3、4本に入ってくる投手。もっと高いレベルを求めている」と向上を期待する。

 「やっと1軍の戦力になれた。次回はもっとピリッとしたい」

 完全復調まで、笑顔はとっておく。【佐井陽介】