<ヤクルト6-5ロッテ>◇17日◇神宮

 悩める主砲の劇的な1発でヤクルトが連敗を6で止めた。3点差の9回、畠山和洋内野手(30)が、自身初、球団史上初の逆転満塁サヨナラ本塁打を放った。開幕は4番で迎えたが、打撃不振で打順は6番まで下がり、2日前の西武戦では今季初のスタメン落ち。どん底にいた男が、14試合ぶりの1発で交流戦初白星に導いた。最下位からの巻き返しに向け、本拠地で派手な反撃ののろしを上げた。

 7連敗目前で、最高の歓喜が待っていた。9回、無死満塁、1発が出れば…。大逆転劇を思い描いてざわつくスタンドをよそに畠山は冷静だった。「外に真っすぐが2球、ボールになった。投手心理からすると中に入れたくなるはず」と、ロッテ松永の心理を読み、祈るように待った。

 願いは届いた。3球目の真ん中に入ってきたツーシームを上からしばいた。打球は低い弾道で一直線に左翼方向へ。「ライトと重なって打球が見えなくて」。目を凝らすと、打球が飛び込むのが見えた。逆転サヨナラ満塁弾は初かと聞かれ、「なかなかいないと思うよ。サヨナラ打も初。久しぶりの感触。ちょっと忘れてた」と笑った。

 意地があった。開幕は4番を務めたが不振を極め、合わせるかのようにチームも低迷した。「責任を感じる」。オープン戦の首位打者で得た自信は失った。打順は6番まで下がり、2日前にはスタメン落ちも経験。そこで余計なプライドを捨てた。「打順とかじゃなく、結果だけを考えてやっていこう」。長打の期待は痛いほど感じているが「飛ばすのは次の話」と足元を見つめ直した。「飛距離よりも、しっかりした角度でボールを捉えられているかを意識しています」。芯で捉え、強くたたく。打撃の基本に立ち返った先に14試合ぶりの劇的弾があった。

 この一打は小川監督も救った。6連敗を振り返り「選手の使い方が悪い」と自らの起用法を反省。どっしりと腹を据えた采配をしようと臨んでいた。だが、7回途中に石川を交代させると2番手ロマンが崩れた。「石川が何とか粘っていたのに代えて失点。また今日も同じことをした。オレのミスで失点して申し訳ないなと思う」と悔やんだ。それだけに「まさか、まさかですよね。本当によく打ってくれた。畠山に救われた」と感謝しきりだった。

 ヤクルトを、畠山を覆っていた暗いムードは、ドラマチックな幕切れで一気に晴れた。畠山は「とにかく打てたことが自信になる」と喜びつつ「今日がスタートと思って1戦1戦戦う。泥臭く、勝ちにこだわりながらやっていきたい」と結んだ。これ以上ない形で連敗を止め、反撃態勢に入った。【浜本卓也】

 ▼畠山がスコア2-5から逆転満塁サヨナラ本塁打。満塁サヨナラ本塁打は今年4月19日福留(阪神)以来77本目だが、そのうち逆転は11年10月22日長野(巨人)以来30本目。3点差をひっくり返した「つり銭なし」の逆転満塁サヨナラ本塁打は10年7月18日ハーパー(横浜)以来3年ぶり15本目だ。また、ヤクルトの満塁サヨナラ本塁打は68年9月16日ジャクソン、82年4月6日岩下、01年5月31日稲葉に次いで4本目。過去3本はすべて同点の場面からで、逆転は球団史上初。