<ロッテ3-2広島>◇20日◇QVCマリン

 今や育成の成長株だ。ロッテ西野勇士投手(22)が、育成ドラフト出身者では史上初の2ケタ奪三振をマークした。9回途中2失点で降板し、完封こそ逃したが今季5勝目(1敗)。推定年俸440万円の右腕が、2億1000万円のWBC代表の広島前田健に投げ勝った。

 ロッテ西野がまた「史上初」を成し遂げた。スタートは1回、先頭の広島菊池を遊直に取った後だった。143キロの直球を内角低めギリギリに決め、中東をわずか3球で見逃し三振。続く広瀬も、得意のフォークを外へ沈め3球で空振り三振に切った。2回の4、5番と4者連続三振。5回まで毎回の10三振を奪い、8回にも2つを積み重ねた。

 育成ドラフト出身者で、2ケタ奪三振は過去にいない。初先発初勝利に続く快挙は、正確な制球のたまものだ。「できれば1回を3球で終わりたい。打たせて取る意識で低めに集めたら、振ってくれました。終わって聞くまで三振数は知らなかった」。序盤は内角を効果的に攻め、外角の球を踏み込ませなかった。巧みなコーナーワークが、狙わずとも三振を量産した。

 もともと奪三振率には定評があった。昨季はイースタンで32回31K。一昨年から勝利数は減ったが、「必要なのは2軍で勝てる力じゃない。1軍の大観衆の前で勝てる精神力だ」(林球団本部長)と、首脳陣にハートの強さを買われ11月の支配下登録を勝ち取った。

 その評価は見事に的中した。「打者を押し込めるイメージ」で投げ込む直球を、捕手の江村は「重いというより強い。攻め気が伝わる」と表現する。西野にとっては、相手投手がWBC日本代表クラスだろうと関係なかった。「対戦するのは打者ですし。相手の投球も見てないです」。年俸440万円右腕が、2億1000万円右腕に投げ勝つという大物食いを演出。チームは対戦7戦目にして、初めて前田健を下した。

 143球。あと2人のところで初完封は逃したが、志願の9回続投だった。前日、大嶺が完封し「年の近い人に負けたくなくて。前田さんより、大嶺さんに負けたくなかった」と負けん気を吐露。成瀬を抜き、チームトップの5勝目を挙げた。「自分が引っ張るなんて、そんな器じゃない。でもチームに刺激を与えられてるならうれしい」。支配下登録1年目の22歳。完封のチャンスも、新たな新記録を打ち立てるチャンスも、底知れぬ可能性を秘めている。【鎌田良美】