<巨人3-5楽天>◇9日◇東京ドーム

 誰もが耳を疑うアナウンスだった。8回裏、坂本の適時打で1点を返し、なおも2死一、二塁。巨人の反撃ムードが最高潮に達したところだった。「バッター、阿部に代わりまして石井」。頼みの主砲は打席に立てなかった。「今日に関しては、出られる状況ではなかったということです」と原監督が説明した。

 直前の8回表、楽天マギーへの2球目。笠原が投げた真ん中高め142キロの直球を捕球した際、異変があった。腕を不自然に伸ばした阿部慎之助捕手(34)は直後、苦しむように背中を丸めた。球団から「背中を痛めたため、大事をとって交代した」と発表された。

 詳しい状況は判明していないが、秦バッテリーコーチは「抹消するんじゃないでしょうか。2日間、様子を見てみてというところでしょう」と険しい表情を見せた。今日10日は休日。明日11日の全体練習で状態を確かめた上で、今後の処遇が決められる。

 試合は、終盤の追い上げも実らず敗戦。リーグ2位に転落し、交流戦は9勝10敗1分けとなった。首位のソフトバンクが勝ったため、巨人が交流戦連覇を果たすには4連勝が最低条件。その上で、上位チームの大敗を期待しなければならない苦しい立場になった。

 阿部はケガの状況について「大丈夫、大丈夫、大丈夫」と3回繰り返した。奇跡の交流戦の逆転優勝を遂げるには、この男の力は絶対に必要。その言葉が、本当であることを信じるしかない。【竹内智信】