<ロッテ5-9日本ハム>◇30日◇QVCマリン

 日本ハム大谷翔平投手(19)はマウンドで小さく息を吐いた。4回2死一、二塁。代打里崎に特大ファウルを打たれ、肝を冷やした直後のことだ。身震いするような大歓声の中、ファウルで粘られて6球目。「ああいうファウルを見せられたので…」。より慎重に投げたはずのスライダーがすっぽ抜け、里崎の肘に直撃した。それまで張り詰めていた緊張の糸が、一瞬にして緩んだように見えた。

 「(投球フォームの)バランスが良くなかった。踏み込みが思った位置にいかなくて、狙い通りの球を投げられなかった」。続く塀内の時には、左足を大きく前に踏み出した際にバランスを崩し、ふらついた。ストレートの押し出し四球を与えて1点を失うと、上位打線に連続適時長短打を浴びて、この回5失点。プロ入り後、自己最短タイとなる4回KO。ほろ苦い思いを残して降板した。

 この日の最速は154キロ。投じた80球のうち、30球が150キロを超え、序盤は打者のバットを押し込んだ。ただ、1対1の勝負には勝てても、走者を出すと弱点が露呈する。1度投球フォームのバランスが崩れると、すぐには修正できない傾向にあった。特にセットポジションの投球になると、その傾向はより顕著になる。弱点を克服しなければ、1軍の先発ローテーションは守れない。大谷は「要所で自分が落ち込むようなプレーをしてしまったのが残念」と嘆いた。

 味方打線の援護があり、19歳のプロ初黒星は帳消しに。ただ、次回登板はいったん白紙となった。評価を問われた栗山監督は「投手はいっぱいいる」と突き放し「この状態じゃあ(次回登板は)全然分からない。見ての通り。今の課題がはっきり出ていた」と、先発ローテの再考をもにおわせた。強運が引き寄せた“不敗神話”は続くが、チームの信頼は実力で取り戻すしかない。【中島宙恵】