<楽天7-3オリックス>◇8日◇Kスタ宮城

 不滅の大記録が生まれた。プロ野球史上初の「無敗の最多勝投手」だ。楽天田中将大投手(24)が開幕から無傷の24連勝を達成した。レギュラーシーズン最後の先発となったオリックス戦で7回4安打2失点。昨年8月26日からは28連勝とし、ともに自身が持つプロ野球記録を更新した。

 無数のフラッシュと拍手喝采が田中を包んだ。花束と記念ボードを掲げ、球場全体を見渡してお辞儀。スタンディングオベーションの観客から大声援を浴び、お立ち台に上がった。「レギュラーシーズンの最後までこういうピッチングを続けることができて良かった。うれしいです」。今後誰にも破られないであろう、無敗伝説を作り上げた。

 序盤は苦しかった。1回は味方の失策が絡んで失点。2回も2死一、三塁から重盗を決められ、追加点を許した。適時打を浴びたわけではない。感情をグッと抑えた。「投げやりになるか、ここでゼロに切っていけばまだ(先は)あると思って、前を向いていけるかの違いだと思います」と、気持ちを切らすことはなかった。失点を最小限に抑え、味方の打線を待った。3回、6得点で逆転。我慢の投球が実った。

 前人未到の連勝街道も、我慢から始まった。昨年、7月18日から8月19日まで5戦連続で勝ち星に見放され、チームも勝てなかった。普段は明るい表情で、打たれても嫌な顔をしないエース。その時ばかりは「テンションが低かった」「試合前は緊張していたようだった」とチームメートは証言する。それでも、決して周囲に弱音を吐かなかった。「自分で乗り越えないといけない」と、苦難と向き合ってきた。

 今となっては、昨年の勝てなかった時期を「野球なんで仕方ないです」と事もなげに振り返る。1試合の平均援護点が3点台と少なくても「めぐり合わせですから」と、我慢を重ねた。苦難から逃げない。だから、道は開けた。5戦勝ちなしの暗闇を抜け出すと、そこからシーズンをまたいで28連勝。真っすぐ栄光への道を進むだけだった。

 「無敗の最多勝投手」という史上初の快挙。「いつもシーズン前に、今年は全部勝つという気持ちでやってます」と話した。1つ1つ積み重ねた24勝。「24勝を挙げられたのは、びっくりしてます」と正直な気持ちも言った。17日にはCSファイナルステージ初戦の先発が控えている。「まずはCSに向けてやるべきことをやって、ファンの方々と一体となって戦っていきたい」。偉業達成の余韻を味わうのは一瞬。日本一へと、再び歩み始める。【斎藤庸裕】