<DeNA2-5阪神>◇17日◇横浜
1球で仕留めた。4度も仕留めた。阪神の1番上本博紀内野手(28)が、ルーキー岩貞のプロ初勝利を強力に援護した。今季2本目の先頭打者アーチを初球に決めると、4回に中押しの左翼線適時打。6回、8回と単打を積み重ね、1試合4安打は2年ぶり2度目のプロ最多タイだ。鳥谷、梅野も放り込む横浜花火大会で効果的に5点をもぎ取ったぞ!
まだ明るい横浜の夕空に白球が舞った。午後6時のプレーボール直後、上本がバットをひと振りした。高崎の変化球をとらえた打球は左翼スタンドに飛び込んだ。初回、初球の先頭打者本塁打。自身初めての経験にも表情を引き締めたまま、ベースを1周した。
「初回から、チームを勢いづける打撃がしたかった。そういう意味でいい結果になってよかったです」
これに呼応した鳥谷がバックスクリーン右に運び、結果的にこの回、3点を奪った。プロ2戦目、初勝利を目指す岩貞に勇気を与える先制パンチは、まさにトップバッターの仕事だった。
「いつも(初回、初球を)いけるようにはしているんですけど。あまい球だったら(打とう)という感じですね」
実は上本が初回の初球を打ったのは今季の90打席中、4度目だった。条件は「絶対的に打てる確率の高いボール」であること。1番打者として真っ先に相手投手に対する。後続打者に球筋を見せ、さまざまな情報を与えるために、粘る。それが上本らしいスタイル。それゆえ初球打ちはわずか4%の確率なのだろう。
今季から阪神15代目の選手会長に選ばれた。エゴを出すことなく、周囲への気配りを欠かさない。そんな人柄はプレーにも表れる。6回の攻撃だった。9番の岩貞が三塁ゴロに倒れて2死となった。一塁へ全力疾走した岩貞が息を切らしてベンチに戻るのを横目に見ながら、次打者上本はゆっくり立ち上がった。2度素振りした。まだ、打席には入らない。投手がプレートを踏んでようやく、打席へ。そして、カウント2-2になるまでまったくバットを振らず、最後は5球目を右中間へ運んだ。
「少しでも(攻撃時間を)長くしようと思って…」
新人投手が緊張感の中で93球を投げていた。少しでも息を整える時間をつくってマウンドへ立たせてあげたい。そんな思いを表現した。上本が初球を打って与えた「勇気」と、打たずに生み出した「時間」-。試合の流れを読み、チームの勝利を考えながら自己最多タイ4安打を放った。ドラフト1位初勝利の裏には選手会長の大胆で、繊細な“援護射撃”があった。【鈴木忠平】



