<日本ハム6-4楽天>◇20日◇旭川

 ラッキーセブンに一挙4得点!

 日本ハムは、今季最後の旭川開催で楽天に逆転勝ちした。7回、1死満塁から西川が押し出し四球で楽天ルーキー松井裕をマウンドから降ろすと、3番陽岱鋼が決勝打、4番中田も連続適時打で続いた。イニング別で今季最多68点の7回に打線が奮起し、勝率を再び5割に戻した。

 したたかに、鮮やかに仕留めた。試合巧者の日本ハムが、シンプルに松井裕の足をすくった。勢いあり、乗せたら難攻不落になる18歳左腕。攻略で最大のポイントの1点を有効に生かし、突いた。試合前のミーティング。コーチとスコアラー陣が協議して、答えを導き出していた。意思統一を徹底したのは「見る」だった。力あふれる投球スタイルの裏にある、まだ発展途上の部分を「弱点」と分析し、クレバーに選手個々が風穴をこじ開けた。

 会心の逆転劇のスパイスは「目力」だった。2点を追う7回、2本の安打を重ね1死一、三塁。9番市川が、松井裕の心の乱れを読んだ。次打者席で柏原打撃コーチがそっと耳打ちした。打ち気を解き、自然体をつくった。「ホームラン打ってこい」。プロ5年目で本塁打0の苦労人が、我に返る。ストレートの四球で満塁。西川が、渋いKO劇へとつないだ。2球で追い込まれたが、心静かに白球に目を凝らした。ファウル1球を挟み7球目、誘う低めチェンジアップを見切った。押し出し四球で1点差とし、松井裕を降板へ追い込んだ。

 完全無欠の意思統一で、逆転の起点ができた。直球は力があり、変化が大きいスライダー、チェンジアップが軸。制球の精度の低さに着目。ストライク、ボールの見極めの徹底を、ミーティングで呼びかけていた。象徴になった西川は打ち気を抑え、忠実に実践した。「カウントが勝手に整っていった。厳しいボールは(ファウルで)カットしていこうと」。狙い球は各自に任せると、豊かな発想にも委ねた。1回1死二塁で、中田の2点目の適時打はチェンジアップ。「野球は流れ」と多くは語らずも、過去の対戦で凡打した勝負球に絞って砕いた。

 綿密な全員野球でつかんだ1勝。栗山英樹監督(53)も火照った顔で納得した。「先をいかれた試合で追いついて…。こういう試合を生かしていかないといけない」。周囲の手違いでスーツがなく、ユニホーム姿のまま旭川-札幌への長時間の車移動を強いられたが、笑顔で受け流せた。勝率5割へ再到達。今季最後の旭川での一戦で、起爆剤になりそうな攻略劇が完成した。決勝打の陽岱鋼は「打ってやろうという気持ち。旭川、アイシテマス!」と叫んだ。本物の反攻の芽にしたい、内容十分の激戦の勝者になった。【高山通史】

 ▼日本ハムが7回に一挙4得点で逆転勝ち。今季のイニング別得点では、試合前まで3回の65点が最多だったが、7回が68点で最も多くなった。得失点差も最多のプラス34でまさにラッキーセブンだ。最近では1日ソフトバンク戦(札幌ドーム)で0-2から7回一挙5得点での逆転勝ちがあった。