<ソフトバンク3-4日本ハム>◇27日◇ヤフオクドーム

 スイートすぎる鉄仮面が崩れた。日本ハム中村勝投手(22)の硬直した表情が緩んだ。1点リードの最終9回1死満塁。守護神増井がアウトを2つ重ねた。7回途中で降板し、後を託した中継ぎ陣が奮闘。絶体絶命からの起死回生の救援劇を見届け、静かに笑った。「絶対に抑えてくれると思っていました」。祈りは通じた。不思議にも「負けなさすぎるイケメン」は神話を継続し、またも黒星を回避、白星を手にした。

 開幕から無傷の6連勝。すべて先発登板に限れば、球団の右腕では96年西崎以来18年ぶりの「快挙」を果たした。3回までに3点の援護を受け、心静かにマウンドを守った。「直球が良かった」。130キロ台が大半だがキレある独特の球質が生命線になった。90キロ台で、自称“スロースライダー”を交え、投球にアクセントをつけた。2安打に2四球と自滅寸前の4回を最少1失点でしのぎ切った。「きっちりいけた」と要所をこらえ抜いた。

 信念を生かし、実践してきた。上沢ら後輩に説く持論がある。「野球は、いい球を投げるゲームではない。悪い球でも抑えればいいんだよ。考えすぎない方がいい」。スピードスターの大谷のような球速の派手さはないが配球、緩急の妙で試合をつくってきた。今季は3度も2軍落ちしたがくじけず、自分を見つめ直して立ち上がった。終盤戦で先発枠の一角をつかみ、定着。強運だけではなく培った実力、ハートの強さ。22歳が奏でるミステリアスな不敗神話には、涙と汗にまみれた根拠もある。【高山通史】

 ▼日本ハム中村が開幕から無傷の6連勝を飾った。開幕から負けなしのシーズン6連勝は、日本ハムでは09年八木、宮西以来。右腕では98年に救援を含め7連勝した金村以来。右腕ですべて先発に限ると96年西崎(7連勝)以来となった。中村の今季、札幌ドーム以外の初勝利でもあった。