<楽天10-3西武>◇28日◇コボスタ宮城

 トンネルをようやく抜けた。楽天塩見貴洋投手(25)が7月31日以来となる5勝目(6敗)を挙げた。最速144キロの直球と100キロに満たないカーブを効果的に使い、6回2失点。打線も星野監督復帰後初となる7月8日の日本ハム戦以来の2ケタ得点を記録。久々に投打がかみ合った試合展開で快勝した。

 照れくさそうに喜んだ。塩見はお立ち台で。約1カ月ぶりの勝利の味を聞かれると「遅いですけど、うれしい。でもやっぱり遅いです」と言葉を選んだ。

 先発投手陣では25歳ながら最年長。余裕のある投球で西武打線を抑えた。1回2死一、三塁で迎えたのは本塁打王争い中のメヒア。初球、98キロのカーブで打ち気をそらすと、もう術中にはめていた。130キロ後半の直球を見せ続け、カウント2-2とすると最後は110キロのカーブをポンと投じた。緩急の差で引っかけさせた。涼しい顔で三ゴロに仕留めると、勢いに乗り6回まで2失点でまとめた。「単調なリズムになりがちなので、タイミングをずらすことを考えた」と思い通りの投球が出来たと振り返った。

 苦しんだ1カ月だった。再昇格した7月14日に白星を挙げるも、続かない。7月31日のソフトバンク戦以降、勝ちから見放された。球威も制球も安定している。だが、勝てない。焦る気持ちもあったが、自分に言い聞かせた。「去年1年間投げていない。絶対に調子が落ちる時期が来る。焦らずに自分の投球をしっかりと取り戻すということを考えた」と自分を信じた。

 球威を取り戻すために大学時代に行っていた、「ロッキング」という練習法を再開した。下半身をシーソーのように動かし、体重移動。1、2、3のタイミングで右足、左足、右足と体重をかけて投げ込んだ。ブルペン投球の前に数十球投げ込むことで「下半身を使うことで球威が戻るきっかけになった」と浮上のきっかけをつかんだ。

 この日の最速は144キロ。「久しぶりに140キロ台も出て良かった。あとは(5勝6敗と)自らの借金を返せるように」と胸をなで下ろした。やっとつかんだ久しぶりの勝利。次は、1つ多い負けを返すだけだ。【島根純】