<阪神1-4ヤクルト>◇30日◇甲子園

 打たれた瞬間、阪神金田和之投手(23)は打球を追い、天を仰いだ。1点リードの4回。1死から連続長短打で1死二、三塁を背負った。打席にはユウイチ。初球の直球でストライクをとったが、2球目の直球は捕手梅野のミットより内側に入った。左中間にはじき返され、2者が生還。逆転を許した。

 「カウントにも余裕があったので、もっと余裕を持っていけばよかった。なんとか粘りたかった」

 試合を作ったが、リズムを呼び込むことは出来なかった。ボール先行の苦しい投球で、独特の速いテンポにも狂いが生じた。先頭打者に3度も出塁を許し、3者凡退は5回の1度だけだった。それでも失点は4回だけで、5回6安打2失点。和田監督も「よく役割を果たした。中継ぎをやってからだから、これ以上求めるのは酷」と評価した。

 これでプロに入って初めて黒星がついた。味方打線に元気はなく、中継ぎ陣も失点した。登板前までデビューから34試合無敗。開幕から5勝を挙げており、10年能見以来の開幕6連勝、右腕に限れば85年中田良弘以来、29年ぶりの快挙さえ視界に入っていた。中西投手コーチをして「持っているね。勝ち運というかな」と言わしめるラッキーボーイ的存在だった。だが粘りながらも初黒星。自己評価も驚くほど低かった。

 「先頭を出してリズムが作れなかった。試合を通して変化球が浮いてしまった。そこは反省です。技術、力不足でした」

 3日前の27日巨人戦(東京ドーム)でも同点の9回に登板し1回無失点で勝ち星を手にしていた。完全な先発調整に切り替えたのは28日からだった。簡単ではない調整にも、言い訳はなかった。今後は休養を挟んで、再び中継ぎ要員としてスタンバイする。また一から無敗記録を作ってくれるはずだ。【池本泰尚】