ソフトバンク工藤公康新監督(51)が13日、宮崎市で行われている秋季キャンプを初視察し、さっそく「工藤塾」を開講した。伸び悩む左腕の山田大樹(26)にパイプ椅子を使うユニークな方法でアドバイス。球界屈指の理論派は「再生工場」としても期待され、投手力アップに力を注ぐ。

 投手陣を見つめていた工藤新監督がおもむろに関係者に聞いた。「椅子ないですか?」。用意されたパイプ椅子を手に持つと、再びブルペンに戻る。座りながらじっくりと観察するのか…。違った。「ここに座るように」。山田の右斜め前方にパイプ椅子を置いた。戸惑う山田に、指揮官はやさしく言った。「本当に座らなくていいから」。投球動作を再開。腰が沈むと、さっと椅子を引いた。

 「お尻には、大きな筋肉がいっぱいある。そこで自分の体を支えるように。体の中心に近いところ、股関節がしっかりと回らないと回転できない。コマの軸のように回らないと」

 パイプ椅子は重心を下げることを意識させるための道具。重心が下がることで、足の踏み出しも安定する。そうなれば、足→下半身→上半身→リリースとぶれなくなる。球界屈指の理論派といわれるが、教え方は分かりやすい。意表を突く小道具を使い、さっそく「工藤塾」が開講した。

 監督就任前から立て込んでいた仕事をこなしながら、過密スケジュールを縫って、日帰りでのキャンプ初視察。スラックスに革靴ながら、身ぶり手ぶりでフォームを指導した。「みんなが気になるが、(山田は)いろいろ悩んでいるのが見えた。1つでも解消できるようにアドバイスできたら、と思った」。山田は12年シーズンに自己最多の8勝を挙げたが、その後は伸び悩み、今季は未勝利。山田だけでなく、DeNAを戦力外となった北方もチェック。現役時代の背番号「47」の帆足や5年目左腕の川原らも気になる存在として挙げた。

 「優勝はしたが、1年間、安定してローテーションを守った投手は少ない。打つ方は12球団で一番。投手を中心に守りを作れば、しっかりと結果は出る」

 基本的には担当コーチに指導は任せる方針だが、必要となれば、アドバイスは惜しまない。若手育成にも力を注ぐが、再生工場としても期待がかかる。プロ実働29年で培った「引き出し」から、何が飛び出すか。工藤流のチーム作りに注目だ。【田口真一郎】