史上初めてポスティングシステムと国内フリーエージェント(FA)権を併用するかと物議を醸し、米球界も注目した日本NO・1投手の去就は残留という最も無難な形で決着した。オリックスからFA宣言した金子千尋投手(31)が24日、大阪市内で会見を開き残留を表明した。4年総額20億円プラス出来高(推定)でサイン。来年1月で阪神淡路大震災から20年。19年ぶりリーグ優勝へ、大型補強を成功させた球団の本気度が、決断の決め手となった。

 金子の結論は、残留だった。最終的にはオリックスへの愛着が、すべてを上回った。「いろんな球団から本当に素晴らしいオファーをいただいた。それ以上にオリックスで今のチームメートと一緒に、今年できなかった優勝をしたい気持ちが強かった」。冒頭でそこまで一気に話した顔は、スッキリしていた。

 愛妻にもほとんど相談せず、ここ数日の間に決断。この日、オリックスと正式契約に至った。楽天、中日などからオファーを受け、代理人とともに自らも複数回、直接交渉の席に着いた。最後に参戦した阪神の条件も加えて決断。オファーの中には将来的なメジャー挑戦を容認しようと、単年契約や、自由契約の条項を盛り込んだものもあった。水面下でのアピール合戦は、激しさを極めていた。

 「すべてをフラットな気持ちで聞いた」という金子は熟考。金額のほか、チーム戦略にも耳を傾けた。「僕がもし入った場合にどういう戦力になってどういう戦いができるかだったり、優勝するために、チーム全体の考え方が、僕の中で重要だった」。移籍に心が傾いた時期も「あった」と認めた。その中で、オリックスの今オフの大型補強が胸に響いた。中島、小谷野、ブランコ、バリントンと柱になりうる実績者を獲得し、来季優勝を目指せる体制を整備。優勝への本気度が伝わった。「すごく大きかった。僕自身もそうだし、ファンも今までと違うと感じたと思う」と明かした。

 オリックスの提示条件は4年総額20億円プラス出来高とみられる。来季年俸は推定5億円で球団最高だったイチローの5億3000万円に迫る。まさに「イチロー級」の好待遇だ。「プレッシャーもあると思うが、今年以上に優勝というものを強く意識して取り組んでいきたい」。今季のチームは優勝したソフトバンクと勝率2厘差の2位。その微差を埋めるべく、沢村賞右腕が来季も猛牛のユニホームでマウンドに立つ。森脇監督からは、既に開幕投手を伝えられている。【大池和幸】

 ▼今季年俸2億円の金子が来季5億円で契約。これまでの最高昇給額は07年金本(阪神)の2億6000万円(2億9000万円→5億5000万円)で、3億円アップは初めて。年俸5億円到達は11人目でオリックスではイチローに次いで2人目。投手では佐々木(横浜)ダルビッシュ(日本ハム)杉内(巨人)に次いで4人目。来季は阿部(巨人)杉内、金子と3人が5億円プレーヤーとなるが、同一年に3人は初めて。