プロボクシングの元世界2階級王者・八重樫東(32=大橋)が19日、IBF世界ライトフライ級王者ハビエル・メンドサ戦(29日、東京・有明コロシアム)に向け、横浜市内のジムで練習を公開した。3階級制覇のかかる一戦を前に、股関節の使い方を意識した新たなトレーニング方法に着手。下半身からパワーを生み出す「獣」のイメージを膨らませ、3度目の世界王座返り咲きを誓う。

 ゴングまで10日と迫り、八重樫が切れのある動きを披露した。ミット打ちでは、松本好二トレーナーが「怖かった」ともらすほどの熱量で、心技体の充実ぶりは明るい表情からもにじみ出た。3度目の王座返り咲きのチャンスに「とにかく勝ちたい」とこの一戦にかける強い思いを口にした。

 理想は獲物を一瞬で捕らえる「獣」だ。9月から、格闘技全般に精通する和田良覚氏、元世界王者・内藤大助を指導した野木丈司氏に新たにフィジカル面の指導を受けるようになった。股関節の使い方を意識することで、下半身から拳に最大限のパワーを伝える動きを追い求めてきた。

 八重樫 体重の関係で筋肉が増やせない以上、いかに出力を上げられるか。理想はチーターとか虎みたいに、足の前の筋肉ではなく、お尻とか大きな筋肉を使うイメージ。打ち合いの中で、瞬間的にガブっとパンチを打ち込みたい。

 昨年末に初のライトフライ級での世界王座挑戦も、屈辱のKO負け。動きも悪く、再起の舞台にはフライ級以上が現実的とみられていた。だが、八重樫は大橋会長から思いを聞かれ、ライトフライ級を直訴。「去年やり残したことだし、自分自身との闘いという意味もある」とこだわりを語った。メンドサはサウスポーのファイターと、打ち合いを好む八重樫とは激闘必至。世界戦10試合目のベテランは「紙一重の勝負になる。気持ちを切らさないように、覚悟を持って臨む」と力を込めた。【奥山将志】

 ◆日本人の3階級制覇 これまで亀田興毅、井岡一翔の2人が達成。亀田は06年にWBAライトフライ級王座決定戦を制し、09年にWBCフライ級王者内藤に勝利。10年のWBAバンタム級王座決定戦を制し、3階級制覇を達成。井岡は11年にWBCミニマム級王者オーレイドンから王座を奪い、12年にはWBAライトフライ級王座決定戦に勝利。15年4月にWBAフライ級王者レベコに勝利し、3階級を制覇した。八重樫は、勝てば3階級ともに王者を破っての達成となる。